かけがわ茶エンナーレでアートにふれる
公開日:2017/10/30
トリエンナーレという言葉を聞いたことがあるでしょうか?イタリア語で「3年に1度」という意味の言葉で、一般的に3年に1度開催される国際美術展覧会のことを指します。
平成29年10月21日、掛川市が3年間をかけて推進してきた茶文化創造千日プロジェクト、「かけがわ茶エンナーレ」が開幕。
ハマラボは一足早い10月20日に、現地にて取材をさせていただきました!
作者の方とお会いして、貴重な制作現場も見せていただきましたので取材調査の結果をご報告いたします!
かけがわ茶エンナーレとは?
かけがわ茶エンナーレとは、静岡県掛川市で平成27年度から29年度にかけて3年間(千日)をかけて推進する茶文化創造千日プロジェクトのこと。「アート×茶・茶文化」の視点から、
- 市民とアーティストと茶産地との積極的な交流
- お茶のある風景・お茶のある生活の再発見
- お茶が持つ細やかなホスピタリティーの再認識
- アートのチカラで新しいライフスタイルの創造
を事業ミッションに、様々なアートプロジェクトに取り組んでいます。
開催中は掛川市全域がミュージアムになり、6つに分けたエリアそれぞれでイベントやワークショップが行われます。
まちなかエリア/五明エリアでは山口裕美総合プロデューサーが選んだ20名+1グループの現代アート作家による「アートセレクション」を展示。掛川城や二の丸美術館、大日本報徳社、商店街など、街歩きを楽しみながら優れたアート作品に出会うことが出来ます。
その他のエリアでは、市民有志・市民団体・地元ゆかりのアーティスト・地域ディレクターが中心となり、掛川市全域を舞台に展開する地域発のアートプロジェクト「みんなのミュージアム」を行い、地域の特色を生かした様々なアートプログラムを楽しむことが出来ます。
今回ハマラボが取材したのは、まちなかエリア南部と大東エリア。様々な「アートのある風景」に出会うことが出来ました!
まちなかエリア
まずはまちなかエリア、アートセレクションの作品。
掛川森林果樹公園に併設された、ベーカリーカフェやレストラン、果物やギフト菓子の販売などを行う「アトリエ」では、神奈川県出身の彫刻家、石塚隆則さんによる作品が展示されていました。
か、かわいい!こちらの作品のタイトルは「いまだ生を知らず いずくんぞ死を知らん」
運よく作者の石塚さんにお会いし、作品についてお話を聞くことが出来ました!
「二宮金次郎像」をイメージしたこちらの作品は、「ほとんどが風景化してしまっている銅像を現代風にして、一石を投じるまではいかなくても何かを感じてもらえたら」と制作されたそう。また、ずっと「金次郎像」を作ってみたかったのだとか。
作者の石塚隆則さん
金次郎の下の擬人化された白い動物たちは、ご先祖様を表しており、「ご先祖様の上に自分がある」という意味。二宮金次郎生誕の地である小田原の木材と石を使っているそうですよ。
背中に背負っているのはバックパック。二宮金次郎といえば「勤労をしながら勉学に励む」
姿が有名で、背中には薪を背負っていますが…?
石塚さん「これは今の子は“勤労”って言われてもピンとこないでしょう、だったら冒険しながら勉学に励む姿を作ろうと思って」
なるほど!かわいい見た目だけでなく深いメッセージを感じられる作品でした!
掛川茶エンナーレ公式ページの紹介ページはこちら(石塚隆則|アーティスト紹介: https://www.chaennale.jp/artselection/artist/takanoriishizuka/ )
市の中心部、掛川市役所にも、アートセレクション作品が展示されています。
掛川市役所の吹き抜けに浮かぶ巨大なバルーン。インスタレーション作家としてだけでなく、アートディレクターとしても活躍する椿昇さんによる作品です。タイトルは「BEFORE FLOWER」その名の通り花になる前の「種」をイメージして制作されたのだそう。
色形様々な“種”たち
DNAが生み出す多様な造形や色彩にインスパイアされてつくられているようですが、作品のイメージについては「どうこじつけるかは見る人に任せる」というスタンス。
ベイビーの胸元にはO2の文字
花になる前、まだ「種」の子供。どんなメッセージを秘めているのか、考えてみるのもアートの楽しみ方のひとつなのかもしれません。
椿昇|アーティスト紹介掛川茶エンナーレ公式ページの紹介ページはこちら(椿昇|アーティスト紹介: https://www.chaennale.jp/artselection/artist/noborutsubaki/ )
大東エリア
まちなかエリアを出て南下、ここからは「みんなのミュージアム」に出品された作品を見て回ります。
女性医師の養成や医学の教育・研究の振興にその生涯を尽くした掛川出身の医師、吉岡彌生の記念館にも、かけがわ茶エンナーレに関連する展示がありました。
吉岡彌生記念館の中にある、移築・復元された生家と長屋門。ここが今回の展示会場です。
門の中に一歩足を踏み入れると、少し不思議な光景が広がっていました。
作者の音羽晴佳さん
高さの違う木の上で、風に揺れる折り紙の船。静岡県出身のインスタレーション作家、音羽晴佳さんによる作品です。
こちらでも、偶然搬入を終えた音羽さんにお会いすることができ、吉岡彌生生家の至るところに展示された作品を案内していただきました。
独特の少しノスタルジックな雰囲気が印象的なこちらの作品は、「日常生活のなかで人が使用した記憶を内包する素材を用いたインスタレーション」
枕や布団たたき、ストロー…。たしかに日常生活のなかに当たり前にあるものです。
風が吹けば回るようにできていて、他者との曖昧な境界線や変化し続ける距離感をそれぞれの素材が離れ、近づき、時には干渉しあう様子で表現しているのだそう。
食事室には、美しく飾られた窓がありました。
この作品は、吉岡彌生の生き方の原点ともいえる伝記の一節をビーズなどの素材に変換したもの。
歴史を感じる静かな空気の中で、きらめくビーズを見てそこに生きていた人に思いを馳せる。場所や空間全体を作品とするインスタレーションという表現方法ならではの体験でした。
音羽さんの詳細はこちら(音羽晴佳さん作品ページ: https://harukaotowa.tumblr.com/ )
大東エリアには、難攻不落の名城と呼ばれた、高天神城の城跡があります。
その城下にある高天神下池では、一級建築士としても活躍するアーティスト、大橋史人さんの作品が展示されていました。
等間隔に美しくならんだ木柱。調査を行った日は、スロープをかける作業の最中でしたが、大橋さんのご厚意で貴重な制作風景を撮影させて頂きました。
「心地よいと感じられる場をつくりだすこと」をテーマに制作された「音連庵」という作品。水上にせり出した「おとずれ」に耳を傾けるための特別な時間の流れる空間です。
スロープからは美しい高天神下池とそれを囲む緑を見ることが出来ます。
最初は池を見るベンチや家具を作るというお話だったそう。
大橋さん「でも、それじゃこの風景に負けてしまうと思ったので。ここでは立ち止まって下池を見てもいいし、スロープを歩いてみても、座ってみてもいい」
完成後の「音連庵」は、ぜひ実際に現地で見てみてくださいね。
FOAS大橋史人建築設計の詳細はこちら(FOAS大橋史人建築設計: http://fo-as.com/ )
今回は、限られたエリアのみ取材調査をしましたが、それでも多くの芸術に触れ合うことができ、なんだか自分でも作品を作ってみたくなりました!
期間中の土日には、アーティストの方によるワークショップやアーティストトークも随時行っているので、そちらもぜひ体験してみてくださいね。
三年に一度の芸術祭。必見です!
この記事を書いた人
- 浜松を愛し、浜松に愛されることを目指して日々研究に没頭中
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