弁天島の真っ赤な夕日も物理学!? みらいーらでお天気について学んでみた
公開日:2021/11/22
秋も深まり、日が暮れるのが早くなってきましたね。
浜松ではこの季節、弁天島の真っ赤な夕日が風物詩だったりします。
キレイな真っ赤な夕日……
はて、「どうして昼間と同じ太陽のはずが夕日は赤いんだ?」なんて疑問に思っちゃったことありませんか。
こんな時は浜松科学館にに突撃だ!
みらいーらのてんちゃんに突撃!
今回お天気の話をしてくださるのは、てんちゃんこと天井(あまい)さん。
てんちゃん
てんちゃん | 実験大好き「てんちゃん」です。 |
―――てんちゃん、今日はよろしくお願いします!
普段はサイエンスショーや展示解説を担当しているてんちゃん。
つい最近では、先月受賞が発表されたばかりのノーベル物理学賞の解説もしています。今回受賞した研究内容は物理学賞としては初の気象分野ということ。
夕日ついての前に、ちょっくら聞いてみました。
ノーベル物理学賞の解説も担当しているてんちゃん
日本出身の真鍋淑郎(しゅくろう)博士が受賞したことで話題のノーベル物理学賞について、てんちゃんが自作の解説パネルで紹介しているそうです。
―――真鍋博士はどんな研究で受賞されたんですか?
てんちゃん |
簡単に言うと気象分野の「地球温暖化の研究」ですね。 二酸化炭素が増えると温度が上がるということを1967年にシミュレーションして証明したんですよ。二酸化炭素が増えると温度が上がるのはもっと前から分かっていたんですが、それをコンピューターで計算して証明したのが真鍋博士です。 |
こちらが博士の計算で出したというグラフ
―――ちょっと物理の定義がよく分かってないんですけど、今回ノーベル「物理学」賞じゃないですか。気象分野も物理学なんですか???
てんちゃん | 一般的には「気象は物理と関係あるの?」って印象でしょうけど、研究者は物理の法則によって気象を計算しているのでガッツリ物理です。熱がどう移動していくかなど、天気は気温や熱に関係しています。気象を扱うには物理の法則を考えないとできないんですよ。 |
―――気象って物理の分野だったのか。浜松市民的にはノーベル物理学賞っていうと青色LEDの印象が強くて(笑)
てんちゃん | 気象はもちろん物理学ではあるんですけど、気象の分野でノーベル物理学賞の受賞は今回が初めてですね。たぶん気象分野の人が一番びっくりしていると思いますよ。 |
―――環境問題が相当深刻だから気象分野に注目が集まったとか?
てんちゃん | 今回なぜ気象分野から選ばれたのかは分からないですけど、受賞した3人のうち、真鍋博士とハッセルマン博士のおふたりが気象分野の研究者ですね。 |
気象は地球規模で考える
てんちゃん | 真鍋博士はコンピューターで計算する時に、地球規模の大きな風の流れや海流を考慮しました。それらも計算に入れて、地球全体として気候の変動を計算できるようにもしたんですよ。 |
―――え、二酸化炭素の量と地球規模の風や海の流れを全部入れて計算するんですか? 計算式で? ……ちょっともう規模が大き過ぎて意味が分からないですね。
てんちゃん | こういう法則をコンピューターで計算させることが天気予報のもとにもなってますね。 |
―――真鍋博士は「天気予報のもと」に貢献している人物でもあるのか! 温暖化を予想した人というと何となくわかりにくいけど、毎日当たり前みたいに見ている天気予報にも関係していると思うとありがたさが分かりますね。
夕日はどうして赤いのか!?お天気実験で夕日を作ろう
地球温暖化や天気予報となると難しい話になってしまいましたが、今回はもっと身近な気象に関する実験をてんちゃんが見せてくれるそうです。
なんと、なんと「夕日はどうして赤くなるのか」が自分でお天気を作り出して実験ができるちゃうんだとか!
どうして夕日は赤く見えるのか実験だ!
―――夕日を自分で作れるって、どうやるんだろう???
てんちゃん | まずは夕日がどうして赤いのか、分かりやすいように絵を用意しました! |
夕日のメカニズム
てんちゃん | 太陽の光には虹に見える色が全て含まれていて、色によっては早くあっちにいったりこっちにいったりと「散乱」するんですよ。その中でも青色は早く散乱が起こって、赤色は散乱がおきにくい。なので、昼間の太陽が上にある時は光が空気の層を通る道が短いので青色が散乱しやすくて青空に見えます。 |
空気の層を通る距離が短いと青色に見える
てんちゃん | 日が沈んでくると太陽の光が空気の層を通る道が長くなります。そうすると青色はすでに散乱してなくなっていて、赤色が残って空が赤く染まって見えるんですよ。 |
―――なるほど、光が通る空気の層によって色が違って見えてたんですね!
実験スタート!
「それじゃあ、夕日を作りますね」とてんちゃんが用意した材料がこちら。
ペットボトルとワックス
―――これが夕日の材料???
てんちゃん |
はい、まずは水とワックスで白い液体が入ったボトルを5本作ります。 これが小さな空気の層の模型になります。 |
空気の層を作り出すというてんちゃん
水500mlにピペットでワックス1mlを注入
―――水に色をつける必要があるんですか?
てんちゃん | ワックスを入れることで光が散乱しやすくなります。牛乳やカルピスを混ぜてもできるけど、ワックスが一番キレイな夕日が作れますよ。 |
満遍なく白くなるようにペットボトルを振ったら空気の層の模型
この空気の層の模型にライトを当てて太陽の光を再現するのだと
まずは太陽の光が真上からあたった状態。
てんちゃん | ライトを当てると、ちょっと青くなっているように見えません? |
―――たしかに、青白い!
(あいにく写真だと白く映ってますが実物は青っぽい光です。)
そこから段々角度が下がって太陽が沈んでくると
てんちゃん | 今度は横から当ててみます。ライトの付近は青く見えてると思いますけど、ライトから離れるとだんだん赤くなってません? これが夕日です! |
空気の層(ペットボトルの水分)を通る距離が短い時は青白かった光ですが、ライトを少しずつズラして空気の層を通る距離を長くすると、ほんのりと黄色っぽく色づいて見えるようになりました。
―――ちょっと色づいてる! けど夕日には見えないかな~。
てんちゃん | じゃあ、色の変化が見やすいように5本でやってみましょうか。 |
空気の層の模型を5本並べて
ペカー
てんちゃん | 近い所は青色、段々だんだん赤に近い色になっていきます。 |
―――おおお!全部色が違う。最後の方はピンク色してますね。
てんちゃん | 次は見る角度を変えてみましょうか。 |
まずは一本だけ
てんちゃん | ここから見るとどうです? |
―――まぶしい(笑) 昼間の太陽っぽいかな。
じゃあ、もう1本
―――ちょっと日が暮れてきたかも。
てんちゃん | だんだん黄色になってきますよね。ここに3本、4本、5本と並べて…… |
5本目
てんちゃん | 夕日のできあがりです。 |
―――うわー、夕日だ!もうすぐ沈む夕日ですよ、これ。
最初は昼間の太陽みたいだった白い光が、空気の層(ペットボトル)を増やすとだんだん夕日のようにオレンジ色に変化していきました。思った以上の再現度!
てんちゃん |
地平線に近ければ近いほど空気の層を通る距離が長くなるのでより赤くなります。だから、夕日が沈む瞬間が一番赤いんです。 真っ赤な夕日が見たいなら天気が良くて、見晴らしの良い場所がいいですよ。 |
太陽の光は虹色だったのでは?
―――青色はすぐに散って赤色が残るのは分かったんですが、太陽の光の他の色(虹色)はどこにいっちゃったんですか?
てんちゃん | 他の色もありますよ。緑とかもちゃんと散乱してます。ごく稀に太陽が緑になる現象もありますよ。 |
―――緑!?は見たことないんですが、たまに夕方に空が紫だったりピンクだったり天変地異の前触れみたいなすごい色の時があるんですけど……
てんちゃん |
もしかすると、夕方でもまだ空に青色が残ってて、赤と青が重なってピンクだったり紫だったりに見えるのかもしれませんね。その日の光の角度や、雲での反射、どれだけの距離を通ってきたかとかで色が変わるので。 それじゃあ、赤い光だけ、青や緑だけだとどうなるか見てみますか。 |
3色のセロハンが登場
てんちゃん | 僕も色付きでやってみるのははじめてです。 |
―――予想だとどうなりますか?
てんちゃん | 青の予想は、手前が青くてだんだん色がなくなる… 早めに色がなくなるといいな。赤は手前が赤くならずに段々赤くなるとか? |
まずは青色フィルムをつけて
てんちゃん | おお、光が後ろまでは届いていないですね。中間から緑だけ残って、だんだん緑になってるように見えますね。少し緑色の光も混ざっていたようです。 |
―――たしかに緑っぽいかも。光が一番後ろまで届かないですね。
てんちゃん | さて、赤色はどうなるか? |
せーの
てんちゃん | あー、後半に届いてる光の量は増えてますね。 |
―――本当だ、最後の1本もピンク色してる。たしかに赤の方が届く距離が長いですね。どうして青色は散りやすいんですか?
てんちゃん | 光には波長があって、赤い光は1回の波が長くて、青い光は短いんですよ。波が小さいと光が散るのが早く、長いとゆっくり。そういう波長による性質の違いですね。 |
ラストは緑!
―――青よりは遠くまで届いているかな? でも緑と青はわりと似てる気がする。
てんちゃん | 人間の目には色は混ざって見えるので、実際の空では青と混ざって水色っぽく見えているかもしれませんね。 |
こうやって実験はやってみないと分からないので楽しいというてんちゃん
てんちゃん | 科学はもちろん、実験が好きですね。疑問を突き詰め、なぜそうなるのかという興味を生んだり、その先を考えられるようになってもらいたいなって思いを実験で伝えています。 |
―――身近な題材で実験するの楽しかったです。今日はありがとうございました!
浜名湖 秋冬の風物詩・弁天島に真っ赤な夕日を見に行こう
夕日を作ったら、実際の夕日を見に行きたいもの。
秋冬の風物詩である「弁天島の夕日」を見ようではないか!
弁天島海浜公園
向かったのは弁天島海浜公園。
時刻は16:30頃。この日の日の入りは17:02予定。
すでに空はペットボトル2本分くらいの空気の層を通った太陽の色です。
日頃の行いが良いのでしょうか雲もほとんどない~
天気よーし!
見晴らしよーし!
何という絶好の夕日日和でしょう。
水面に揺れる夕日の道も美しい
鳥居から伸びるような夕日の道。
弁天島の鳥居は観光用に作られたそうですが、いいお仕事してますよ。
さぁ、絶好のポジションへ
せっかくなので浜名湖の秋冬の風物詩らしいショットを狙って、太陽が鳥居の中へ来る位置へ。
観光客らしき人々がちらほら訪れていたのですが、みんな狙いは同じなので撮影スポットに人が集まっています。
どんどん赤く染まる空。
だがこの景色を前に物理学は全然頭をよぎらない(笑)
これが太陽の光が空気の層を長く通ると赤色が残るからと言われても、不思議でしかない。実際の景色を前にすると難しいことなんて吹っ飛びますね。ただただ美しい。
あ、ちょっとズレた
沈むギリギリが1番赤いそう
余韻よ……
うん、良きかな。良きかな。
実は浜松市民なのに弁天島の夕日を見に来たのははじめて。お天気が良ければこれがいつでも見れるのか。ちょっともったいないことしてたな~。
夕日の実験をして弁天島に夕日を見に行ったら、物理学はチラリとも頭をよぎらなかったけど(!)なかなかじーんと来る風景に出会えました。なんだろう、人間近すぎるといい所に気づかないものですね。思いがけず地元の良さを再発見しました。
そして、ちょっとだけ賢くなった気分で黄昏時を過ごす知識をゲットしたのです(笑)
今日も長距離おつかれさま、みたいな?
実験大好きてんちゃん。
みらいーらの館内を移動しているだけでも実験が始まります!
ミニワークショップの会場を通りかかると
マジックみたいな実験がはじまった(笑)
見えたり消えたり!? 不思議だ
胸ポケットからはいつでも実験道具が出てくる。ドラえもんなの?
胸ポケットに潜ませているのはてんちゃんがオリジナルで考えたコイルの実験!
T〇ICAの中身はこうなってるってコイルで作っちゃったのだと。
(これはぜひ実物をてんちゃんに見せてもらってほしい)
身近なモノの中身がこんな風になっているのかと再現されているのでおもしろい!
さらには次にやろうと思ってる実験も登場(内緒)
本当に実験大好きなんだなってひしひしと伝わってきました~。
この記事を書いた人
- 文鳥を飼っています。
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