僕らはみんな生きている!竜洋昆虫自然観察公園で昆虫探し
公開日:2019/09/02
磐田市、旧竜洋町にある「磐田市竜洋昆虫自然観察公園」。
静岡県下では、昆虫をメインに扱う施設はここ、磐田市竜洋昆虫自然観察公園と藤枝市にある「ふるさと世界の昆虫館」だけ。
本日は、磐田市竜洋昆虫自然観察公園(以下:りゅうこん)の職員であり、トークイベントや本の出版もされている、昆虫のスペシャリストであるこんちゅうクンこと、北野さんに館内を案内していただきました。
特別展「世界のカブト・クワガタ展」に行ってきました!
年に二回行われる「カブト・クワガタ展」は企画展の中でも大人気の展示。
通常の企画展を行う企画展示室と生態展示室の2部屋を使った、りゅうこんの展示の中でも比較的大型の展示になっています。
中央のオブジェは地元の高校生の卒業制作をゆずり受けた。
毎年行われる「カブト・クワガタ展」ですが、毎年展示テーマがことなり、今年(2019年夏)は生息地がテーマ。
展示場の国旗は展示に出場している15カ国の国旗が飾られています。
─── カブトムシ、クワガタを一度にこんな種類みたの初めてかもしれないです。どうやって用意したんですか?
こんちゅうクン | 海外の希少なものは専門の業者さんから仕入れています。ですが、一部は、自分たちで繁殖させたり、捕まえてきたものもあるんですよ。 |
─── 展示だけじゃなくて飼育も施設で行なっているんですね。ちなみに、今回の展示で こんちゅうクンイチオシはどれですか?
こんちゅうクン |
エラフスアカクワガタですかね。大きさ、色、形、どれを取っても申し分ないです。特に、色は他のクワガタにはない色。アゴの形もかっこいいんですよ。 ヘラクレスのように子供にそこまで人気がないのも、なんというか渋くて個人的には好きですね(笑) |
エラフスアカクワガタ
メタリックな色合いが美しいですね。アゴの形も優美でスタイリッシュな雰囲気。
─── この中で一番珍しい子ってどれなんですか?
こんちゅうクン | 珍しい…難しいところですねえ…。例えば、このサタンオオカブトムシですかね。ボリビアにあるデスロードという、車ごと崖に転落して年間何百人が亡くなってしまうような、細い細い山道がありまして、サタンオオカブトムシはそのデスロードを渡った先に生息していて非常に珍しいので、「幻のカブトムシ 」と呼ばれていたんですよ。 |
─── 呼ばれていたということは?
こんちゅうクン | そうなんですよ。今では、日本でも繁殖できるようになって、「希少なカブトムシ」ではなくなりましたね。 |
サタンオオカブトムシ
ツノの裏とお尻の毛がもふもふでなんか可愛い!
─── カブトムシやクワガタってツヤツヤキラキラしててキレイですね〜!人気があるのもわかるなあ〜!
こんちゅうクン | キラキラしてるといえば、ローゼンベルグオウゴンオニクワガタもオススメです!僕のリュックのモデルになっているクワガタなんですよ。 |
ローゼンベルグオウゴンオニクワガタ
こんちゅうクンのクワガタリュック
ちなみに、クワガタリュックが正式コスチュームになったのは、もともとはこんちゅうクンの友人が昔使っていたものを譲り受けたのがきっかけだそうで、今はもう製造されていないためなかなか入手困難なのだそう。
常設展示
常設展は、りゅうこんで飼育している生き物を見ることができます。
りゅうこんの虫たち
上手に隠れるツダナナフシ
「新幹線に似ている」というキャプションをみてから、もうそれにしか見えないカイコ
─── カイコって初めて生で見たかもしれない…。
こんちゅうクン | カイコって野生にはいないんです。「人の飼育下でしか生きられない唯一の家畜昆虫」と呼ばれています。もともと「クワコ」っていう野生の桑の葉を食べる蛾がいて、カイコのように繭を作るんですが、カイコほどは糸ははかないです。カイコは人間に品種改良されてたくさん糸をはくようになりました。繭一個につき、約1,000から1,200mの糸を出します。 |
─── このカイコたち、ケージに入ってないですけど、脱走しちゃったりしないんですか?
こんちゅうクン | それが逃げないんですよ。それも、人間にとって飼いやすいに改良されているからなのですが、それは成虫になってからも顕著で、成長して蛾になっても飛べないんです。しかも、成虫になったら餌も食べない。だから、地べたでバタバタって羽ばたきながら交尾して、卵産んで死んじゃう。自然界で自力では生きていけない んですよ。 |
─── それは、「家畜昆虫」と呼ばれるのも頷けますね…。
こんちゅうクン | 約5000年前に人間が作り出したと言われています。 |
そして、りゅうこんといえば「ゴキブリ展」。嫌われ者のゴキブリのイメージが覆る?!との触れ込みとそのインパクトが人気の冬から春にかけての特別展です。
こちらは、館内で飼育中のマダガスカルゴキブリ。
ゴキブリを飼育ってどういうこと?!と面食らいましたが、マダガスカルゴキブリは、翅(はね)がなく飛ばないそう。
落っこちないようにヨジヨジとしがみつくマダガスカルゴキブリ
こんちゅうクン |
ゴキブリっていうと日本では嫌われ者のイメージですよね。
でも、このマダガスカルゴキブリは翅(はね)がないので飛ばないし、動きもゆっくりで走らない。さらに、人家に住み着かず、森の中にいるので汚くない。主食も果物や草花です。 嫌いになってしまうような要素は一つもないんですよ。 |
─── 確かに!確かにそうだけど、ゴキブリって名前がついてるとなんかヤダなあ…。
こんちゅうクン | そういう人は多いですよ (笑) 不思議ですよね。ゴキブリってなんで嫌いなんだろうって自分の心に聴いてみながら観察すると面白いですよ。 |
─── 思えば、ゴキブリってなんでゴキブリっていうんですかねえ。
こんちゅうクン | 昔は、触覚があるから「ツノ虫」とか、「あくたむし」とか、「あくた」っていうのはゴミっていう意味なんで要約すると「ゴミ虫」っていう結構ひどい言われようだったみたいです。 |
─── 「ゴミ虫」ってなんて安直というか、悪口ですね、もはや。
こんちゅうクン |
江戸時代になると、そのツヤツヤした体から「アブラムシ」とか、「ゴキカブリ」と呼ばれるようになりました。「ゴキカブリ」のゴキは漢字で書くと「御器」。蓋つきのご飯の器をかじっていることから名前がついたんです。 明治時代に、ある教科書が「ゴキカブリ」の名を間違えて「ゴキブリ」と表記してしまって、そのまま定着してしまったんです。 |
─── ええ!誤植から生まれた名前だったってことですか!?
こんちゅうクン | そうなんです。 誤記されたことによって「ごきぶり」になったんですよ。 |
─── うまいオチがついたもんだなあ(笑)
りゅうこんの両生類・爬虫類たち
トロピカルゾーン
こんちゅうクン | 爬虫類は展示をするのに特別な許可が必要で、今までは展示してなかったんですが、去年からここでも展示できるようになりました。爬虫類も最近は増えてきています。 |
アカハライモリ
コバルトヤドクガエル
りゅうこんの新しいアイドルをご存知ですか。
その名も、ヒキガエルの「アズマどん」。
ヒキガエルのアズマどん
唯一、人間以外でりゅうこんの年間パスポートをもっているアズマどん。
こんちゅうクンが額を撫でると目をつむりお腹をぷくっと膨らませていました。
─── あ、かわいい〜!撫でられてる時、なんか気持ちよさそうに見えました。
こんちゅうクン | 実は、あれって防御体制なんですよ。蛇に丸呑みにされないように体をおおきくしていたんです。 ヒキガエルは毒を出すのであまりお子さんには触らせてあげられないのが残念なのですが、そういった生態も間近で見ることができますよ。 |
─── (キャプションを見る)え?菊川市出身って書いてある!あれ、アズマどん、菊川市に住んでたんですか?
こんちゅうクン |
そうなんですよ。 僕がスカウトしてきたんですけど、菊川にハンミョウ採集に行ってた時、竹林にスッと座ってたんですよ。 |
りゅうこん研究室(りゅうこんラボ)
一階の生態展示室は新コーナーもありました。
もともと20年間水槽が入っていたところを、リニューアル。
りゅうこんの職員である、ファーブルしずまさんこと、柳澤さんの「裏が見えるとわくわくしますよね!」という一言がきっかけとなり、バックヤードをあえてみてもらうスペースにすることが決まったそうです。
標本展示室
二階は標本展示室になっています。
標本の裏側には、
・採集した場所
・採集した日
・採集した人
が記載されているんだそうです。
綺麗だなあ…
標本展示室の標本を探すコーナーが個人的には面白かったです。
擬態が得意な虫たちを探すのですが、これが意外と難しい。
コノハムシという葉っぱそっくりの虫が全然見つけられずにギブアップ!
昆虫採集の難しさがわかりました。でも、見つけた時はすごく嬉しかった!
皆さんも探してみてくださいね。
さあ、本番だ!野外ゾーンで生き物を探そう
中央ゾーン
─── 昆虫をみつけるコツを教えてください。
こんちゅうクン | まずは「探すこと」ですね。虫もなるべく見つからないように、葉っぱと同じような緑色をしていたり、何かの裏に隠れていたりします。歩いているだけだとただの公園ですが、虫を探す眼になって、見つけようと思って探すと必ず出会えますよ。 |
こんなとこにもいた!
─── 虫を探す眼になるかあ。いい言葉ですね。
こんちゅうクン | あとは、お目当の虫の好きな食べ物や卵を産む植物などの情報をあらかじめ仕入れておき、近くで待機していると出会う確率も高くなります。蝶々だったらお花の近く、トンボだったら水辺に卵を産むから水辺など、昆虫や季節によって観察場所はいろんなところにありますよ。 |
野外ゾーンは、昆虫館のある中央ゾーンと地下通路を渡った先の北ゾーンに別れています。
こんちゅうクンから教わったことを胸に刻み、ハマラボスタッフも昆虫探しをしてみましたよ。
虫を探す眼になると、たくさんの生き物と出会うことができました。
オリジナルグッツが豊富なショップでお土産を買おう
施設内のショップには、虫にまつわるグッツがたくさん。
りゅうこんオリジナル商品も豊富です。
生き物たちの缶バッチの中に、まさかのこんちゅうクンも紛れてた。
その中でも、気になったのがこちら。木製ストラップとのことですが、32種類と種類が豊富。プラスシークレットも3種類あるとのことで非常に気になる。
こんちゅうクン | 実は、僕と柳澤(ファーブルしずまさん)のストラップもあるんですよ。 |
ほしい〜!昆虫よりもお二人のやつがほしい〜!
これは俄然引くしかないですよね!
「取材のためなんですッッッ」と上司にお金をせびり、お小遣い1000円ゲット!
一回300円なので、ガチャポンチャンスは3回。
ガチャ
ポン
ななな、なんと!
「こんちゅうクン」引き当てました!
うおおおおおお!
ストラップと一緒に、こんちゅうクンの虫知識が入っていて最高でした。
りゅうこんの魅力
最後に、りゅうこんの魅力を聞いてみました。
─── りゅうこんの魅力はどんなところだと思いますか。
こんちゅうクン | 人だと思います! |
─── 人間!
こんちゅうクン | そこ、昆虫じゃないの?って思ったと思うのですが、自分も含めて スタッフとの距離が近いことが魅力だと思います。こんちゅうクンっていう存在も、お客さんとのふれあいの中で生まれていったのかな、と。 |
─── 確かに、取材中もいろんな方がこんちゅうクンに声をかけてましたね。
こんちゅうクン |
そうなんですよ。 普段も、遊びにきてくれたお子さんが事務所に入ってきて、僕に「ねえねえ!」って頭突きをしてきたり(笑)他の昆虫館の人とそんな話をすると「ありえない!」って驚きますよ。 |
─── 愛されてるなあ〜!あと、人の魅力というと、展示の仕方が工夫されていて、ちょっと笑えるものもあったりして、すごく面白かったです。
キャプションは手書き。
こんちゅうクン | ありがとうございます。 キャプションはスタッフの手書きなんですよ。印象に残るように、キャッチコピーみたいなものをつけたりしてます。今、開催中のカブト・クワガタ展は、全て僕がキャプションを書いてますよ。 |
─── 不思議なワードの書き初め(?)もありましたよね。
こんちゅうクン | 書き初めは去年から始めたのですが、 学術書で使われるような昆虫の専門用語を解説しています。元々の発端は、 「完全変態」という四字熟語を書き初めで書きたいという願望から始まったんです(笑) |
その他にも…
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カブクワシールのもらえるクイズラリー
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オリジナルステッカー
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かわいいイラスト付きメッセージ
スタッフさん自身が、楽しみながら作った展示だから愛情を感じますね。
親しみやすくて、人の気配がちゃんとする。
素敵です。
─── 最後に、りゅうこんを訪れる子ども達にメッセージをください。
こんちゅうクン | 気楽に遊びにきてほしいですね。あと、 虫って動物園や水族館の動物たちと比べて、とっても身近にいます。りゅうこんに遊びに来て、お家に帰った後も虫たちにはいつでも会えます。もし、 虫たちに会いたくなったら、ぜひ、いつも行ってる学校や公園、お庭なんかで探してみてくださいね。 |
磐田市竜洋昆虫自然観察公園にはたくさんの生き物たちが暮らしていた。
どちらかというと苦手な虫やカエルだったけど、スタッフさんの愛情あふれる展示をみたらちょっぴり可愛く思えた。
取材に訪れたのはちょうど夏休みが始まる時期だったので、自由研究のことや、こんちゅうクンの子供の頃のお話を伺いました。
─── 自由研究で生き物の観察するってなって、「どこみたらいいの?」って迷う方多いと思う のですが、アドバイスもらえませんか。
こんちゅうクン | よく、自由研究で「カブトムシやる〜!」「蝶々にする〜」とか聞くんですが、それはあくまで研究対象。その虫の 何を調べたいのか。それによって、見るポイントって違うんですよね。 例えば、「昆虫の足ってカブトムシとバッタと蝶々でどう違うのかな?」とかそういう疑問をもったら足に注目して見ますよね。「蝉には目が5個ある」その情報が子供達に入っただけで、目が気になりだしたりする。 何を見たいか、何を知りたいか、そのテーマを設定してみると、今までと違う見方ができるんじゃないか、と。 |
─── なるほど!着目点を具体的に持つことが大事なんですね。
こんちゅうクン | 僕らもガイドをするときは、「ナナホシテントウって点7個あるって本当?」とか 興味を引き出すような質問をしてみたりしています。そうすると、「えっと、いち、に…」って数えだしたりする。そういう「みるポイント」をなるべく教えてあげられるよう心がけています。 |
─── こんちゅうクンが昆虫を好きになったきっかけってなんですか?
こんちゅうクン |
気づいたら好きでしたね!でも、さらに 深く昆虫の世界に夢中になったきっかけは 小学校の理科の先生です。 登下校の時に捕まえた虫をその先生に見せるのが日課で(笑) そうすると、先生はその虫について教えてくれるんです。それをきっかけにどんどん興味が湧いていったんですよ。 |
─── そんな風に新しい世界の扉を開けてあげられる大人の存在って大きいですね。
今は、こんちゅうクンがその役割を担っているんですもんね。こんちゅうクンのように、昆虫のことを専門にしてお仕事にするってどうすればいいんですかね。
こんちゅうクン |
こんちゅうクンのようになるのはオススメしないんですけど(笑) よく小学校のお子さんのいるお母さんからそういう質問を受けることはありますね。ここにくるお客さんって小学校中学年が多いんです。それは、お子さんが大きくなるにつれて、興味が他へ移っていくからなんですが、それは、とても自然なことだし、健全でいいことだと思います。もし、 昆虫をお仕事にするのならお子さんが高校生になった時まで好きでいるか、そこが結構分岐点な気がします。 お子さんには、たくさんの可能性がありますから、昆虫の世界も含めてたくさんの世界を知ってもらえたらと思います。 |
─── こんちゅうクンは高校生までずっと昆虫一筋だったんですか。
こんちゅうクン | 中学生になるまでは、ずっとその理科の先生に会いにいってました。でも、中学生になると、部活に勉強で忙しくなって一回、虫とは離れていました。大学選びの時、将来の仕事を考えた時に、好きなことを仕事にしたいと思い、昆虫学を学べる大学に進学しました。 |
─── 小さい頃の出会いや胸がときめくような経験も大切な将来の選択肢になり得るんですよね。
本日は、ありがとうございました!
りゅうコンのもう一人のプロフェッショナル、ファーブルしずまさん。
今回、記事本文ではあまり触れられなかったので、取材でお話を伺った内容を元に漫画を描いてみました。
この記事を書いた人
- 猫と一緒に暮らし始め、猫アレルギー疑惑が払拭されました。猫の毛ってすごい空中に舞いますね。ふわふわ。
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