笑いあり!学びあり!の浜松科学館のサイエンスショー
公開日:2021/04/02
煙を吐き出す空気砲やくるくる回るカラフルな風船、とっても冷たい液体窒素…
魔法みたいに不思議な科学現象を見せてくれるサイエンスショー。瞳を輝かせた子どもたちの拍手喝采!
そんな熱気のあるサイエンスショーを見に浜松科学館へいこう!
- 1. 科学に親しめるサイエンスショー
- 2. 大人気!サイエンスショーの裏側に迫る
- 3. 実は道具は全部手作り!
- 4. バックヤードも拝見
- 5. うえちゃんこと上野さんってどんな人?
- 6. うえちゃんの黄色い眼鏡
- 7. サイエンスチームの頼れるリーダー
- 8. レゴにハマった少年時代
- 9. 小学生のころ怖いイメージだった科学館で働くまで
浜松科学館のサイエンスショーは毎日開催!
常設展の入場券を購入すれば見ることができます。
サイエンスショーは館内中央の大きなステージ「みらいーらステージ」にて行われる
- ①11:00〜11:10
- ②12:00〜12:10
- ③13:00〜13:10
- ④14:00〜14:10
- ⑤15:00〜15:10
サイエンスショーのプログラムは、「シャボン玉」「空気」「風」「ロケット」「磁石」「風船」「液体窒素」「鉄道」「回転」「飛ぶ」など10種類以上!(※ 2021年4月時点。変更の可能性があります。)
どのプログラムでもショーを見るお子さんの食いつきは折り紙つき。きっと気に入ると思いますよ!
また、教育目的の団体であれば学習オプションとしてサイエンスショーを依頼することができるんですよ。
その際は「風船のショーをお願いします!」と好きなプログラムを選択する事が可能です。
定員は200人まで。「あら、大人数じゃないとダメなのかな」と思った方、安心してください。少人数でもお願いできるそうですよ!
科学に親しめるサイエンスショー
サイエンスショーというと幼稚園、小学生くらいのお子さんが対象というイメージですが、実はそんなことないんですよ。
今回はちょっぴり大人向けなサイエンスショーということで、特別に中学生向けのサイエンスショーを見学させていただきました!
本日のショーを担当してくれるのは、黄色のメガネがトレードマークのうえちゃん。
うえちゃん | みなさん、これ知ってます? |
観客 | しゃぼん玉〜! |
うえちゃん | 正解〜!そりゃ、みなさん中学生だもんね、知ってるよねえ(笑) |
軽快な手つきでぷわっぷわっとシャボン玉を作るうえちゃん。
どうやら本日のショーは「シャボン玉」がテーマ。
うえちゃん | 拍手もらうと嬉しいですね〜!もっと大きいの作っちゃおうかな。 |
おお〜!
もう十分凄技だと思うのですが、これはまだまだ序の口。
シャボン玉にシャボン玉を入れたり
雪だるまのシャボン玉
うえちゃん | ほら、シャボン玉が二つ重なった形になりました。これ、何に見える? |
観客 | お尻〜〜! |
うえちゃん | お尻〜?(笑)一応、雪だるまのつもりで作ったんですけど! |
くまちゃん型
うえちゃん |
バナナの形をしたシャボン玉ができると思う人、手を挙げて!うんうん、なるほど。 じゃあ、やってみましょうか! |
バナナ型?
うえちゃん |
今度はシャボン玉の中身に注目してみましょう!シャボン玉の中には何が入っていますか? …そう!空気ですよね。 じゃあ、他のものも入れたらどうなるかな? 見てみましょう! まずは、煙! 煙ってシャボン玉に入ると思う?煙を入れられたらすごくない? |
観客 | すごい! |
うえちゃん | じゃあ、やってみようか! |
白いシャボン玉になった!
上に浮かんでいくシャボン玉
燃えるシャボン玉
すげ〜!と大盛り上がりの観客
シャボン玉の泡
綺麗〜!
最後に本日の目玉、「特大シャボン玉」を披露!
紐?
シャボン玉液をつけて…
お、
おお!
ああああ〜〜!惜しいッ!
うえちゃん |
うわ〜〜!今の惜しかったなあ〜〜! もう一回チャレンジさせて! |
観客 | がんばれ〜! |
今度こそ!
特大シャボン玉!
ぽわん
まんまるになった
さすが、大成功!
シャボン玉でか〜!
うえちゃん「皆さん、ありがとうございますッ!」
大人気!サイエンスショーの裏側に迫る
ショーの後のうえちゃんに突撃インタビュー
─── サイエンスショーのこだわりや見所を教えてください!
うえちゃん |
今日は中学生の方が相手だったので、少しいつもより難しい内容も入れてみました。内容も、お客さんを見つつ変えてやっているんですよ。 今日みていただいたショーは学校側から「シャボン玉」というオーダーをいただいていました。 シャボン玉というのは保育園幼稚園の子が好きそうなお題だというイメージがあるじゃないですか。 |
─── 確かにそうですね。小さい子の遊びのイメージが強いです。
うえちゃん |
でも、実はそんなことなくて。 「シャボン玉って何色なの?」とか「どうして丸くなるの?」とか紐解いていくと大人の方でも疑問に思うことっていっぱいあるんですよ。それに、大人の方でもシャボン玉って好きでしょう。 |
─── はい(笑)おおっぴらに公言するのはちょっぴり恥ずかしいけど好きですね。
うえちゃん | でしょう?(笑) 子供の頃にシャボン玉を見て感動した思い出が心の中にあるから、おそらく多くの人は好きだと思う。 |
うえちゃん | 幼い頃は「シャボン玉って変な形〜!」とか「綺麗だね〜。」で、十分いい体験なんですが、僕らのショーは“サイエンスショー”なので、科学のエッセンスをちょっと足したい。それでいて、「おっ!」って興味を持ってもらえるものを見せたいなと思っています。 |
─── 特大シャボン玉にワクワクしました。シャボン玉の中の水素を燃やす実験もちょっと危険なのが大人向けというか。一味違いましたね。
うえちゃん |
あはは(笑)ありがとうございます! 今日のシャボン玉の実験は「シャボン玉の中には空気が入っている」っていうことを意識して欲しかったんですね。 |
─── 空気の存在か。確かに普段シャボン玉を見るときには意識していなかったです。
うえちゃん |
空気の量によって大きさが変わるっていうのが最後の超特大シャボン玉の実験。 あれが実は難しくて…(笑)失敗を前提にやるんですが、僕が一生懸命になってやると皆、ものすごい食いついてくれるじゃないですか。 |
─── 会場の一体感があそこで一気に生まれた感じがしました。
うえちゃん | 「できるかな?」って固唾を飲む感じ。緊張感が伝わってくるくらいの空気感がサイエンスショーで生まれるのは、やっている僕もすごく面白いです。 |
─── 成功したときにワッと歓声が上がって、みんな自然と拍手していました。
うえちゃん | 多分、あの子たちが小さい頃に見たシャボン玉の記憶に、中学生になってみた特大シャボン玉の記憶が積み重なって、新たな経験値になっていってくれているんじゃないかなと思うんです。 |
─── 市販のシャボン玉セットで遊んだ幼少期の経験に、今日のシャボン玉の実験の記憶が足されるわけですね。「シャボン玉ってあんなことできるんだ!おもしれー!」って思った子たくさんいると思うなあ。
うえちゃん | そういう子が一人でもいれば嬉しいなあ。今日のショーから科学の世界に興味持ってくれたら、しめたものですね。 |
実は道具は全部手作り!
─── ショーで使った道具を見せて欲しいです!
うえちゃん | いいですよ。ちょうど後ろにありますからどうぞ。 |
─── ん?待って、これ手作りですか?
うえちゃん | おお!そうですそうです。サイエンスショーの道具ってどこにも売ってないからで手作りですよ。 |
─── 知らなかった!じゃあ、これは針金を曲げて作った?
うえちゃん | そうです。この青いのは毛糸を巻いてます。なんで毛糸を巻くかというと、シャボン玉液を染み込みやすくするため。たくさん液が染み込むのでそのまま連発してシャボン玉を作ることができます。何回も液に浸さなくても良いの。 |
ぽこぽことシャボン玉が生まれる
─── へえ〜〜!ショーならではの工夫ですね!ポポポポって手早くシャボン玉を作っているあの軽快さはこういう工夫の上に成り立っていたのか…!
うえちゃん | 基本形は普通の丸い枠なんですが、じゃあ、これを大きくしたら、とか、二つの部屋に分けたらどうなる、とか、丸い以外の形でやったらどうなる、とか。ね?もうこれだけでショーになっちゃう。 |
─── おもしろ〜!
うえちゃん | 特大シャボン玉を作る道具も手作りですよ。大きなシャボン玉を作るというと枠を大きくすればいいんですけど、枠を大きくすると、液にひたすためにその枠よりも大きなプールが必要になってしまうので。 |
うえちゃん |
近くで見ると結構雑に作ってるんですが…(笑) 下をリングにすることで自由に大きさが変えられる可動式になってます。 |
─── これで自由に大きさを変えられるんだ!よく思い付きますね。
うえちゃん |
シャボン玉は研究家が多いので色々な人がいろんな形を考えているんですよ。 僕もそれを参考にしながら…、あくまでうえちゃん流で作ってます。 |
─── うえちゃん流!
うえちゃん |
僕が使いやすい大きさで、このステージにあった形だからうえちゃん流。 手作りなので、今日は毛糸の調子がいいとか悪いとか肌感でわかるので便利ですよ。 |
うえちゃん | 後は、こんな風に既製品を改造することも多いです。先がシャボン玉吹きになっているスプレーなんて売っていないから作っちゃった(笑) |
─── 大きな枠でシャボン玉作ったことあるんですが、あんなに上手にできなかったですよ?本当にあれはシャボン玉液?
うえちゃん |
シャボン玉液ですよ!(笑) ただ、うちのオリジナルブレンドだから市販のとは少し違うんですよね。 YouTubeのうちのチャンネルで解説していますから、ぜひ、その配合通りに作ってみてください。(【おうちDEみらいーら第67弾】割れない!長持ち!シャボン玉液の作り方:https://youtu.be/CPDcFc_dZAg) |
─── おお!ありがたい!これで割れないシャボン玉ができるぞ…!
うえちゃん | ただ、厳密にいうとショーで使うシャボン玉液は少し違うものですね。 |
─── あ、やっぱり違うんだ!
うえちゃん | ショーで使うシャボン玉液はね、僕しか作れないんですよ。職人技なんで(笑) |
─── 秘伝のタレみたいだな(笑)
うえちゃん | もし誤飲したときに身体に影響がないように、とかご家庭で使うのはやっぱり安全を考えなくてはいけないので…。膜を強くしたいからと言って濃度を上げればいいということではないんですよ。 |
うえちゃん |
ショーで使うシャボン玉液には、グリセリンなどの成分も入っていたりします。 かっこいいこと言うと季節で配分変えてます。乾燥してる季節では水分量を変えたりしてます。 普段はざっくり分量量って混ぜ合わせるんですけど、混ぜた時の重さと粘り方があってね…。 パイプで混ぜ合わせるんですけど、パイプにねっとりとまとわりつく感覚があるんですよ。これがね、感覚的なもので…(笑) |
─── ほんとに秘伝のタレじゃん!(笑)
バックヤードも拝見
─── おお〜!バックヤードはこうなっているんですね!
うえちゃん | 身の回りの道具を使って出来ちゃうよってところも見せたくて、ほとんどが手作りです。 |
段ボールで作った空気砲
筒みたいな装置?
うえちゃん |
これはね、雲を作る装置です。 液体窒素とお湯を反応させて雲を作るんですが、いい素材ないかなと思って探してたら僕が昔使ってたタンブラーが耐熱で(笑) タンブラーだけじゃ自立しないんで植木鉢のトレーに穴あけてタンブラーを安定して自立するようにしてます。この段ボールの芯みたいなのは「ボイド菅」っていって工事現場でよく使われる芯材です。このように、実は超アナログなものの組み合わせだったりします。 |
─── ボイド菅?聞いたことない資材だなあ。材料にめっちゃ詳しいですね。
うえちゃん |
そうそう(笑)材料にめっちゃ詳しい。 これが欲しいと思ったら、まず作ってみるタチなんです。材料集めも自分でやるので、ホームセンターと百均マニア。 |
マネキン?
─── 不思議なものもありますね。マネキンの頭部だけある。
うえちゃん |
このマネキンは風のショーで浮かせてます。 丸いものを探していたら、マネキンにたどり着きました。 |
─── マネキンを丸いものに分類してるのが既にツッコミどころですねえ。
うえちゃん |
ふふ(笑)でも、マネキンが浮かんだら面白いでしょ? それでね、なんでネクタイしてるかっていうと、マネキンだけじゃバランス悪いんです。左右にふれちゃってね。ネクタイをするとね、重心が下に行くから安定するんですよ。何かに似てません? |
─── 凧!!!
うえちゃん |
そうそう。凧の尻尾ってまさにそういう意味です。 これね、お父さんに言うとすごく納得してもらえるんですけど「お父さん、なんで毎日ネクタイつけて出社するの?」って。 世の中とのバランスをとるためなんです。(笑) |
─── あはは!哀愁漂ういいオチがつきましたね。(笑)
うえちゃんこと上野さんってどんな人?
カメラ向けたら決めポーズしてくれた
うえちゃんの黄色い眼鏡
─── 開口一番に言うことじゃないんですが、ショーの時とメガネが違くないですか?
上野さん |
いやいや、普段から黄色いメガネで歩いてたら変態じゃないですか。(笑) みんなによく言われますけどね、「メガネ違うんですね」って。 あんな人がうろうろしてたら嫌でしょう! |
─── あはは!いや、そこまで言うつもりなかったですけど…(笑)
上野さん |
あれはショーで「うえちゃん」になるための衣装の一つ。 出オチでいいんですよ。実は僕、ショーを始めた一番最初の時は普通のメガネに白衣でしたよ。 |
─── あ、そうなんですか?
上野さん |
「上野です。ショーを始めます。よろしくお願いします」って言ってたんです。 真面目な感じ。やっぱりインパクトがなくて、だったらまずはメガネでインパクト出そうかなと。 |
上野さん |
サイエンスショーで何を伝えたいって、授業でもないし講義でもない。 子供達に科学の法則を教える気はさらさらないんです。 科学館でショーを見た子どもたちが「今日、変なメガネかけたうえちゃんって人が面白いことしてた」でいいです。お家に帰っておうちの人と「今日、うえちゃんって人が変なことしてた〜!おもろかった〜!」って、一言でも話題に上がったら勝ち。 |
─── え!それだけでもいいんですか。
上野さん | 不思議とそういう体験って覚えているもので、大きくなって学校で科学を習ったときに「あ!あのとき、うえちゃんのやってたやつってこれだ!」って気づく人もいると思うんです。自分で気づいたことは絶対に忘れないし、理解できますから。そういうきっかけづくりですね、サイエンスショーでやりたいことは。 |
─── なるほど。だからインパクトが大事なんだ。
上野さん |
出オチで黄色い眼鏡のどぎつい奴が出てきてね、「なんやこいつは!?」って頭の中を刺激して(笑) それが、白衣きた普通の眼鏡の上野だったら多分子供達は忘れちゃうんですよ。 いくら面白い実験やってたとしてもね。 |
上野さん |
うえちゃんとしてステージ上がる時はすごいですよ。3歳、5歳の子供に「やあ!うえちゃん!」ってカンチョウとかしてきますから(笑) でもそのくらい垣根が低い方がいいんです。とっつきやすい。 科学館に来ている子に「僕、私、科学知ってる!もしかして、科学得意なのかもしれない」って思わせたいんですよ。 |
サイエンスチームの頼れるリーダー
─── 上野さんは、サイエンスショーやワークショップ、展示解説などを担当するサイエンスチームのリーダーをされているそうですね。サイエンスショーの構成やワークショップのお題出しなどを担当されているとお聞きしたのですが。
上野さん |
そうですね。サイエンスショーの基本は僕が考えています。例えば、ショーは本筋を考えるのは僕の仕事です。ただ、シナリオは書きません。シナリオを書くと暗記になってつまんなくなってしまうので、僕が考えるのはあくまで土台。後はみんなに自由にアレンジしてショーを作ってもらいます。 ですので、ある意味、みんながみんなライバル。 |
─── なるほど。自分でショーを考えているからこそ他の人がどういう風にショーをアレンジしているのか気になりますね。
上野さん |
そうそう。どうやっているんだろうって、みんなお互いにすごく見ていますよ。 僕もめっちゃみられますけど、絶対に負けないっ!(笑) まだ譲らないよって気持ちでやったり、見せつけるつもりでやったりしてます。 |
─── そういえば、今日もスタッフの方が見学にきていました。
上野さん | 中学生向けのシャボン玉のプログラムは発展的な内容も含むので、上野はどうやってやるのかなと興味持って研究してるんだと思いますね。 |
─── ほお〜!みなさん、意欲高いですね!
上野さん | 僕も他の職員に注目してもらえるのは嬉しいことです。自分も上野みたいにやってみたいと思う人が出ればその人も次のステージに目指して上がってくるし、じゃあ僕はもっと上に行こうって思う。 |
─── かっこいいなあ〜!パフォーマーの一面もあるんですね。
浜松科学館で一番のサイエンスショーパフォーマーの上野さん。ついついパフォーマーとしての一面ばかり注目してしまいますが、実はいろんなことに携わっています。
上野さん |
普段はいろんなことをやっていますよ〜! 工作とか、イベントの企画とかもやっています。 昨年の11月に開催した「ロックバランシング ※」イベントでは然るべきところに許可をとって天竜川の石を拾ってきたり…。(※ 絶妙なバランスで岩や石を積み上げるアート) |
実演してくれた
カメラマン二人が仕事そっちのけで遊ぶほど面白いらしい…ってコラ!写真撮ってよ!
上野さん | 後は、ワークショップでみなさんに作ってもらう科学工作を考えたり、企画展で展示するものを作ったりなど工作が得意ですね。 |
3月開催のビーコロ展に出展予定の上野さん作のビー玉コロコロ装置
─── いろんな引き出しがありますね、上野さん。面白いなあ。
レゴにハマった少年時代
─── 工作が得意とのことですが、小さい頃からですか?
上野さん |
子供の時から好きでしたね。 きっかけになったのは夏休みの宿題。意外と真面目にやる子だったんです。 そして、真面目にやるんだけど何か見返りが欲しい子だった…(笑) |
─── あはは(笑)見返りが欲しかった。
上野さん |
見返りがもらえるのがね、夏休みの貯金箱コンクール。 作品を出せば絶対参加賞がもらえると。 じゃあ、変わった貯金箱を作って景品おもらおうとか…。 実は、そういうところから工作をするようになりました。 |
─── 夏休みの工作が好きだったんですね。
上野さん |
後は、これは完全に親の策略だなと思うことがあって…。 僕は小さい頃、レゴ少年だったんですよ(笑) |
─── ブロックを組み立てて遊ぶ、プラスチックのおもちゃですね。
上野さん |
すごいレゴが好きで…(笑) 昔は、サンタさんといえば「レゴ!」、誕生日といえば「レゴ!」と(笑) でね、僕、お城が欲しかったんですよ。 だから、サンタさんにレゴのお城を頼んだら、消防車が届いたんですよ。 |
─── ん?聞き間違いかな?お城を頼んだら、消防車が届いた?
上野さん |
そうなんです。サンタさ〜ん!って感じですけど(笑) だけど、僕、お城を諦めきれなくて、消防車のパーツでお城を作ろうって思ったんです。そこから、自分の作りたいものがパーツを組み合わせることで作れるってことに気がついて。 だからね、あの時に要求通りにお城をもらっていたら、それを組み立てて満足しちゃってたかもしれない。 |
─── お城が消防車だったことがターニングポイントだったと!(笑)
上野さん |
レゴから、自分で考えて何かを作り出す面白さに目覚めましたね。 最後にはレゴのパーツだけが欲しくなっちゃって。100ピースとかのセットの方が魅力を感じるようになっていったんですよ。何を作ろうかなと、自分の理想の町を作ったりとか。 |
─── 自分の理想の町か。すごい想像力だ!
上野さん | それが工作に目覚めていったもう一つのきっかけですね。 |
小学生のころ怖いイメージだった科学館で働くまで
─── 科学に興味を持ったり、科学館で働こうって思ったのは子供のころからですか。
上野さん |
小さい頃に「科学館で働きたいな」と漠然と思っていた時期もありましたね。 僕は兵庫県姫路市出身なんですが、小学3年生の時に地域の科学館がリニューアルしたんですよ。それまでは、「〇〇文化センター」みたいな施設の横についてた暗〜い資料館が科学館だったんです。 |
─── ああ〜!昔はありがちですね。
上野さん | そこにシロクマの黒い剥製があって…(笑) |
─── しろくまのくろい剥製!?
上野さん |
シロクマがね、経年劣化して黒くなってるんですよ!もうボロボロッ(笑) 後は、白いイノシシ…埃で真っ白ッ(笑) それから、巨大な円盤。今思い出すとね、ベンハムのコマってやつなんですけど。 それがね、爆音立てて回るんで恐怖でしかなかった(笑) |
上野さん |
そんな怖いイメージだったところが、完全にリニューアルして楽しくなって、科学って面白いなって思ったんです。その後は、先生になりたかった時期もあり科学館のことは忘れていました。 ですが、学生の時に科学館で「科学の祭典」という、各ブースで実験ができるよってお祭りがあり、その祭典で出展者としてバイトをした時に「あ、この仕事は面白い」と。 |
上野さん | そこから学芸員の資格を取得したりだとか…。大学院に進学して学芸員の資格が取れると思ったらその学科では取れなくて(笑)だから、僕ダブルスクールで土日違う大学通って学芸員の資格を取ったんです。 |
─── ダブルスクールは大変!そうか、科学館で働くには学芸員の資格がいるんですね。
上野さん |
学芸員の資格が絶対に必要というわけではないんですけどね。そんなこんなで資格を取り、日本のどこでも行くと職探しをして山梨の科学館に採用していただきました。ですが、仕事に就くまで何の担当かわからなくて。 それまでは科学館の職員といえば、展示の巡回やプラネタリウムの解説員ぐらいしかイメージがなくて。いざ、入ってみたら実験工作担当の部署だったんです。 |
─── ほう。実験工作担当?
上野さん |
実験工作担当って何するんすかって感じで(笑)文字通り、実験やって工作やってそしてショーもやるんだよって。 ショーの道具も売ってないから自分で作るんだよと。「自分で作るんですか!?」ってその時、ショーの道具が販売されてない手作りのものだということを知り、じゃあ作りますよって、やりたいことやるには作るしかないですよねって。 |
─── そんな感じで科学館でのお仕事が始まったんですね!今のご活躍を知る身としては、正直意外です。
上野さん | いろんな方とのご縁があってこうなりましたね。本当に自分でもビックリです。 |
─── 今の仕事の楽しいところってどんなところですか。
上野さん |
ショーも科学工作もそこには伝えたいものがあります。 それを学校の先生が授業するような伝え方とは別の伝え方をする事ができるんですよね。楽しく学んでもらうためにアイディアを絞ったり自分の手で道具を作ったり…その工程全てが面白いです。 ショーを見て喜んでくれたり、工作して遊んでくれてるっていうのを間近で見れるのもすごく嬉しいと思います。 |
上野さん |
アイディアを形にしていくときの試行錯誤は面白いですね。ものづくりの面白さというか。ミニワークを企画する時に、「あまり面白くないな」って思ったものって子供にも伝わっちゃうんです。「これ、作った人のこだわりが詰まってますね」って工作の方が面白いねって。 見透かされてしまうので、自分が面白いと思ったものを伝えたいと思う、その気持ちをいかに持ってやるか。 |
─── 子供ってそういうの敏感に感じ取りますよね。
上野さん | ミニワーク作りって簡単な工作のように見えるけど、没ネタが多いんですよ。一つ作るのに三つ没にしてます。これまでの表に出たミニワークに行き着くまでにどのくらいのプロトタイプがあったかっていう…(笑) |
─── 試作品を何度も作り直して…ぶっちゃけ、嫌になる瞬間ってあります?「うわ〜!全然上手く行かねえ〜!もうやだ〜!!」みたいな。
上野さん |
ふふふ(笑) そこがまたね、難しいところなんですね。仕事なんでね、そういう割り切りもあります。 追い込まれるんで、「しょうがない!これ作んないと帰れないよな」っていう(笑)それでも、やっぱり僕は楽しいですね。 |
上野さん |
しかも、そういう時こそ、違うネタが出てくるんですよ。厄介なことに(笑)今作っているものに集中すりゃいいのに、次のネタが出てくるんで今度はそっち作りたくなっちゃう。 上手く行かない、ここがこうだったらな、こうするとどうなるのかなって思うとそっちに振れちゃう。 |
─── ちょっとわかる気がする(笑)手を動かした結果、新たな気づきを得て、それがさらなる発想を生むというか。
ショーでも問いかけがさらなる展開のキーワードになる
上野さん |
それは子供達も一緒ですよ。前、科学館で作った工作のここを変えたらどうなるんだろうとか。この工作とこの工作をくっ付けたらもっと面白いものできるぞ、とか。 中には、作っている途中でアイディアを得て改造してみたいという子もいます。そういう子がいたときは、もう僕らは「やってみて!やってみて!」って。すごく嬉しいです。 |
─── 将来の可能性を信じて伸ばしてくれる人がいるってすごく子供にとって幸せなことだし、いい環境ですね。
上野さん | 科学館のスタッフとして、子供たちの自由な発想のきっかけづくりだったり、科学の理解に一役買う、そんな存在になれたらいいなと思っています。 |
サイエンスショーすごく面白かったです。
ショーが始まってからの子供たちの食いつきはすごかったですね。実験が成功すると自然と歓声が生まれて拍手を送っていました。
シャボン玉を意のままに操るショーは大人相手でも「お〜!」と盛り上がること間違いなし!
普段は聞けないお仕事への熱い想いもお話いただき、改めてかっこいいなと思いました。
科学を通して子どもたちの未来をより豊かにしたいというモチベーションが素敵でしたね。
また、何より楽しくお仕事をされていてインタビューしていて気持ちが良かったです。まさに天職だ!
この記事を書いた人
- 猫と一緒に暮らし始め、猫アレルギー疑惑が払拭されました。猫の毛ってすごい空中に舞いますね。ふわふわ。
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