浜名湖は生き物がたくさん。ウォットで魚を観察しよう
公開日:2019/08/09
浜松市西区の弁天島にある、浜名湖体験学習施設ウォット(以下:ウォット)に行ってきました!
浜名湖、浜名湖に流れ込む都田川、遠州灘に暮らす生き物を集めて展示している学習施設。
今回は、同施設の飼育員と学芸員をされている、大竹さんに案内をしていただきました。
ただいま、企画展「魚体博物館」開催中!
ただいま(現在2019年)、ウォットでは9/1まで企画展を開催中。
魚の体について、展示を見ながら学ぶことができますよ。
さらに、夏休みの自由研究を応援!オリジナルワークシートがもらえますよ。
展示のキャプションを読んで、穴埋め問題を埋めることで、しっかり学べます。
ぜひ、会期中に訪れてチャレンジしてみてくださいね!
アクアゾーン
一階の展示エリアには約120種類、個数にして1000匹ほどの魚が展示されています。
大竹さん | こちらの渓流水槽は、都田川の上流から浜名湖に流れ着くまでを再現した水槽になります。 |
─── 浜名湖だけじゃなくて、それを形成している川の生き物から紹介してくれるんですね。
大竹さん |
そうなんです。 一番最初の水槽にはアマゴやニジマスなど川の上流にいる魚が泳いでいます。 |
─── そういえば、浜名湖って海水と淡水が混じった汽水湖ですよね。この水槽ももしかして…
大竹さん | ええ、生息環境に合わせて水質を変えています。よくみていただけると、上流・中流・下流で水槽が分かれてるのをご覧いただけます。 |
大竹さん |
現在の湖内は海水の影響が強くなっています。 ですので、湖内で獲れる魚もほぼ海水魚になってます。 |
─── 現在はってことは、昔は違ったんですか?
大竹さん |
歴史の中で、地震や地殻変動などにより、浜名湖は海とつながったり、隔離されたりというのを繰り返してきました。 何百年単位で見ると、淡水魚が多かったという時期もあるんですよ。今は、ほぼ海水に近いですね。現代ならではの影響ですと、ダムが建設されたりして川の流入が減ったというのも一因ですね。 |
大竹さん | ここからはテーマごとに分けて水槽を構成しています。こちらの三連の水槽は、向かって左は「海のハンターであるサメ」、真ん中は「にょろっと長い魚のアナゴとウミヘビ」。右は「隠れるのが得意な魚」です。 |
─── ウミヘビって魚なんですか?
大竹さん | 多分、イメージされてる「ウミヘビ」は爬虫類に属するウミヘビですね。こちらの水槽にいるのは、魚類の「ウミヘビ」なのでウナギに近くて毒もないんですよ。 |
うなぎみたいなウミヘビ
─── ちょっと見ただけでも、こんなにたくさんの種類の魚がいるんだと驚きました。
湖に対するイメージが変わったかも…。
大竹さん | ちなみになんですが、うちの魚たちは浜名湖の漁師さんたちにいただいた魚なんですよ。 |
─── え!実際に浜名湖に住んでたものを展示しているってことですか。
大竹さん | そうなんです。ちょうど時期的に獲れるものがあれば、それで水槽を構成することもあります。購入するものもありますが、基本的に浜名湖で生息が確認されている種類を展示しています。 |
─── どの水槽になんの魚を入れるのかって結構難しそう。
大竹さん | そうですね。魚同士の相性や水温などの適応環境もあります。例えば、同じ水槽に入れたら食べられちゃった、なんてことのないようにいろんな要素を考慮して水槽の構成は考えています。 |
大竹さん | ここの水槽は、魚の「泳ぎ方」という観点で紹介しています。体全体を使って泳ぐ魚や尾びれを動かして泳ぐ魚、胸ビレや背びれを駆使して泳ぐ魚など、実は魚によって泳ぎ方が違って面白いんですよ。 |
ウツボ
─── なんかウツボが「あ〜、ダルい〜」って感じですね。夏バテですかね(笑)
大竹さん |
確かにそう見えなくもないですが、ウツボは夜行性なので昼間はそんなに動かないんですよ。 それと、隣の水槽に入っているのはチョウチョウウオ。今の時期に獲れます。 |
チョウチョウウオ
─── チョウチョウウオの水槽にぶら下がってる貝は飾りなんですか?
大竹さん | これはエサですね。水槽にいれて間もないので、餌付けるためにアサリを与えています。環境に慣れてきたら、普段あげているようなエサに切り替えていくんですよ。 |
─── 獲れたばかりの旬のお魚を見ることができるんですね。あ!この子、可愛い〜!
大竹さん | この子はコンゴウフグの子どもです。とても人気がありますよ。動き方もとても可愛いです。 |
カメラにお尻しか向けなくてカメラマンを困らせたコンゴウフグの子ども
大竹さん | フグは人に寄ってきたりしますよ。水槽越しから、ちゃんと人のことが見えています。 |
─── へー!「何かが居るぞ」って寄ってきてくれるんだ。ますます可愛いですねえ。
大竹さん | フグは背ビレと尻ビレ、胸ビレ、尾びれを上手に使って泳ぎます。背ビレと尻ビレは推進力に、尾ビレと胸ビレは方向転換に使っています。 |
─── 見た目は全然違う魚でも泳ぎ方っていう区切りでいえば仲間っていうのが面白いですねえ。
大水槽
大竹さん | ここが大水槽になります。この水槽は水深5mあるのですが、浜名湖の平均水深と同じくらいの深さになっています。水量は約120トンです。 |
─── はあ〜!圧倒されますね。こんなに大きな魚が浜名湖にいるんですか?
大竹さん | 実は、浜名湖は水深が浅いので、カンパチ、ぶりなんかも生息してはいるのですが、子どもの頃に浜名湖で暮らして大きくなると出ていきます。釣りをしてても、カンパチなんかは小さいのしか釣れません。ですから、今、大水槽に入っている大きい魚は、小さい時に浜名湖から獲れたものをうちの水槽で大きく成長させたものを入れているんですよ。 |
─── 確かに、こんなに大きな魚がそのまま浜名湖に住み続けたら、湖の中ギチギチになってしまいそうですもんね。
大竹さん | 大人になっても、浜名湖に住み続ける魚もいるんですよ。スズキやクロダイなんかは、そのまま湖内で成長していきます。 |
─── あれ?なんかそこの方にじっとしている魚もいますね。休憩中ですか?
大竹さん | ハタの仲間やクエはあまり動かないんですよ。魚によって行動パターンというか習性が違うんですよ。 |
─── 泳ぎ疲れて休んでるわけではないんだ…!勉強になります。
大竹さん | ここは私たちに身近な魚、例えば食べる魚だったりというのを展示しています。遠州灘で獲れるとらふぐやキジハタなどのいわゆる高級食材として扱われるような魚も展示されています。ここの水槽に入っているカンパチとぶりは子どもです。 |
─── さっきみた大水槽の魚より小さいですね。あのくらいの大きさに成長するのにどのくらいかかりますか。
大竹さん | うーん、そうですね。環境や個体によっても違うのではっきりとは言えないのですが、うちの環境ですと5〜6年ほどかかります。 |
─── 5年前にきた子どもを大事に大事に育てて、ようやく大水槽でお披露目できるんですね。
アカメ
大竹さん | この魚はアカメというのですが、この魚は日本三大怪魚の一つとされているくらい珍しい魚なんですよ。 |
─── ええ?この魚が? なんかアカメに対して失礼なこと言っちゃいますけど、見た目が地味で珍しいという印象は受けないけどなあ…
大竹さん | そうですね。ぱっと見は普通の魚ですが、珍しいとされる秘密はその名前の由来にもなった「赤い目」にあります。光をあてると目が赤く光るんですよ。レンズのように反射して夜だと本当に赤く光ります。今月8月に「ナイトウォット」という夜の18:00からのイベントがあるので、その時に真の姿を観察するチャンスがありますよ。 |
─── 見てみたい〜!お昼でも角度によっては赤く見えますね。
大竹さん | アカメは四国の四万十川の流域にいる魚です。なぜ、四国の魚がウォットに展示されているの、という風に疑問に思われたかと思うのですが、おそらくなんですが、潮の流れに乗って流され、浜名湖にたまたま入り込み、そのまま浜名湖に住み着くことがあるんですよ。 |
─── そんなこともあるんですね。迷い込んじゃった感じなのかな。
大竹さん | 浜名湖では年に数匹とか、見つからない年もあるくらい珍しい魚です。アカメの北限は浜名湖とされていて、たまたま生息環境が浜名湖と似ているので住み着くことができます。他の所にはなかなか住み着くことはないんですよ。 |
─── へー!お!ここにもフグがいる。
イシガキフグのギョンタちゃん
大竹さん | このイシガキフグは先日来館したさかなクンが持ってきてくれたんですよ。なので、この子は千葉の館山に住んでた子です。今日、水槽に入れたばかりで、この環境に馴染んでくれるかどうかお試し中です。 |
大竹さん | ここは毒がある魚の展示と、その隣は遠州灘の深海にすむ生き物の展示です。 |
ヒレに毒があるカサゴ
─── あ!カサゴ!私が小学生の時に初めて釣った魚がカサゴなんですよ(笑)
「なんか綺麗な魚釣ったよ〜」って言ったら、周りで釣りしてたおじさんが血相変えて「それ毒あるで気をつけて!」って言われて、とても驚いたという思い出があります。
大竹さん | カサゴは身近な魚ですよね。毒に注意して調理すれば、とても美味しい魚です。 |
─── これは、ダイオウグソクムシの仲間?生で見ると思ってたより大きいなあ!
大竹さん | これはオオグソクムシと言います。ダイオウグソクムシはもっと大きいです。大きい個体だと50~60センチくらいありますよ。この遠州灘の深海の生き物たちは「遠州底引き網」というのを冬季にやっているのですが、そこで獲れるものになります。 |
「#裏キモイ」のタグでSNSにて人気のグソクムシ
大竹さん | 夏休みなので、特別展示で危険な生き物の展示をしています。 |
アカエイのあかちゃん
大竹さん | このアカエイは今年、湖内で生まれた子です。この子は白い色度変異を起こしていてとても珍しいです。通常、アカエイは赤褐色で砂に隠れられるような色合いなんです。だいたい一匹の親から10匹前後の子どもが生まれます。生まれながらに、すでに毒針を持っているんですよ。よく見ると、真ん中にあたりに毒針が見えますよ。 |
─── あ、ほんとだ!赤ちゃんのエイでも毒針で攻撃できるんですか。
大竹さん | そうですね。生まれながらに備わっているので、押さえつけようとするとピュッと防御してきます。成長とともに毒針も太くなっていくんですよ。 |
パンダうなぎ
─── (キャプションをみて)パンダうなぎ? 面白い名前ですねえ。
大竹さん | 現時点では五匹水槽にいるんですけど…、気まぐれなんでね、今は二匹しか顔だしてないですね(笑)このパンダうなぎは珍しくて、10万匹のうちの1匹という確率で出会うか出会わないか、そのくらい珍しいです。 |
─── パンダうなぎっていう種類なんですか?
大竹さん | 「パンダうなぎ」という種類があるわけではなく、先ほどのエイと同じように変異でこのようなまだら模様になりました。ですので、種類としてはニホンウナギになりますね。これは食用では商品にならないので売り物になりません。うちのような施設に引き取られたり、お家でペットとして買う方もいます。 |
学習ゾーン
二階の学習ゾーンには小さな生き物や図書コーナーがありました。
二階へと続く階段にはびっしりとうなぎの色紙が。
大竹さん | 今年の初めにやった書き初めのイベントでみなさんがつくった作品を飾っています。テーマがうなぎしばりだったので、こんな感じになってます。 |
解放実験室
大竹さん | 1階に展示できないような小さい魚たち、あとは魚意外にもカエルやイモリなんかもいます。理科室のような親しみやすい部屋になってます。 |
ミズクラゲ
大竹さん | この水槽ではミズクラゲを飼育しています。クラゲの子どもをエフィラというんですが、エフィラも見ることができますよ。ちなみに、エフィラの前はポリプと言います。クラゲは成体になるまでに何回も形を変えて、その度に呼び名も変わるので面白いですよ。 |
その他にも、梅干しそっくりなイソギンチャクやちいさいヤドカリとのふれあいコーナーなんかもありました。解放実験室のなかの生き物は、ウォットの職員さんが自分たちで採集したものもあるのだそうですよ。個人的には、解放実験室の展示を担当されているスタッフさんの、ちょっと自虐の効いた手作りキャプションがついつい読みたくなっちゃう面白さでした。
ストローは命を与えられエビに生まれ変わった
ワークショップで作成されたストローを使ったエビも飾ってありました。
イベントも定期で開催されててオススメ
ウォットでは、定期開催のイベントも盛りだくさん。
その中でも浜松ならでは、月曜・木曜以外の15:00から開催される「ウナギのパクパクタイム」を見学してきました。
ウォットではウナギを3種類飼育しています。ニホンウナギ、オオウナギ、バイカラウナギ。ニホンウナギとオオウナギは日本にも生息しています。バイカラウナギはフィリピンやインドネシアなどに生息しています。
「ウナギのパクパクタイム」ではニホンウナギとオオウナギのえさやりを見学することができます。
クイズを交えながら楽しく学べる
たくさんの人が参加していました。
ニホンウナギの水槽ひとつには、だいたい200匹ほど、オオウナギの水槽一つには、だいたい20匹から30匹のオオウナギが入っているそうです。
オオウナギは名前の通り巨大なウナギ。この水槽の中では、一番大きいもので伸ばすと1m50くらいの大きさの者もいるそうです。私の身長とほぼ同じくらいウナギ…!体重も10キロほどあり、蒲焼きにすると数十人分になるそうです。
─── 食べれるんですか?オオウナギ。味はどうです?
大竹さん | 食べられるには食べられるんですが、やはり味はニホンウナギより劣ると言われています。身は淡白で皮も厚いんです。食用のニホンウナギもあまり大きく育ち過ぎてしまうと食用には向かなくなってしまうんですよ。 |
─── まさに大味ですね。
ウナギたちは野生ではエビやカニを食べているそうですが、ウォットでは練り餌を与えています。
魚粉を水と油で練ってお餅のような大きな塊にします。
お餅のようにと言っても、お餅ほどの硬さはなくぷるんとした感触。結構、イワシのような生臭い匂いが強かったです。
うなぎは目が悪く、匂いで餌を探すのだそうです。
ふれあいコーナー
ふれあい水槽
ふれあい水槽は手を入れても水が溢れない不思議な水槽。
密閉した水槽を真空ポンプを使い気圧の調整を行うことでこの不思議な仕組みを作っているんだそうです。
大竹さん | 普段、手から餌をもらっているので、手が入ってくると「餌がもらえるかも!」と思ってツンツンしてきます。 |
大竹さん | ちなみにですが、ふれあい水槽は手を入れても冷たくないように熱帯魚の水槽になっています。 |
うなぎも触れる
ニホンウナギに触れることのできるコーナー。
UxoTube。オフィシャルサイトから公式YouTubeチャンネルに飛ぶことができます。
大竹さん | これは意外と受けがいいんですよ(笑)子供がふれあい水槽でうなぎを触っている間、大人はこっちをみて楽しんでますね。水揚げ、出荷の様子から、実際に鰻屋さんで捌かれるところもちゃんと映像でありますし、一貫してうな丼ができるまでを見ることができます。 |
こちらはタッチプール。裸足で入ることができ、この日もたくさんのお子さんが水遊びをしていました。
大竹さん | ここは購入したエサをあげたり、魚を触ったりできるタッチプールです。浜名湖の水を掛け流ししているので、気温によって水温も変動します。時期によって、放す魚も変えています。夏は小魚ですね。冬になると、ヒトデやなまこと触れ合えるようになりますよ。また、浜名湖の水は海水に近いので、近くに手洗い場も設置しています。お子さんは結構夢中になって遊ぶので着替えやタオルを持ってきていただくと思う存分遊んでもらえると思います。 |
ウォットの魅力
最後に、大竹さんにウオットの魅力について教えていただきました。
─── ウォットの魅力を教えてください。
大竹さん | 浜名湖にどんな生き物が暮らしているのか、ウォットの展示を見てもらうことですぐにわかってもらえるところですかね。水槽も近い位置にあるので、お子さんも間近で観察することができます。ふれあいコーナーも幾つかあり、実際に触れ合うことでどんな生き物なのかな、というのを体感してもらえる機会がたくさんあるのも魅力だと思います。 |
─── 大竹さんの個人的にオススメな展示ってどれですか。
大竹さん | 僕の中ではパンダうなぎですね。見た目も面白いですし、柄もよく見ると一匹づつ違うので、自分がお気に入りの一匹を見つけられるっていうのもいいのかなと。 |
─── 自分のお気に入りっていいですね!パンダうなぎの存在もここで初めて知りました。
これから、ウォットに遊びに来る子どもたちにメッセージをください。
大竹さん |
浜名湖にはいろんな生き物がいます。魚の種類は約470種、その他の生き物を含めると約840種の生き物が浜名湖で確認されています。 一般的に、湖っていうと生き物が少ないイメージがありますが、浜名湖は海とつながっていることでたくさんの生き物が入ってきて、普通、湖にはいないサメやエイ、珍しい魚もいます。そんな浜名湖の多彩な姿を見てもらえたら嬉しいです。 |
─── 自由研究なんかで魚をテーマにする時って、どういったところを観察すれば、その魚のことを知ることができますか。
大竹さん | そうですね、一匹の子に注目して観察してみたりすると、泳ぎ方の違いや、あとは性格なんかも違ったりするんですよ。魚の中でも、性格のきつい子もいれば、おとなしい子もいる。どんな魚でもいいので一匹にますは注目して見てみると、「どうしてこんな動きをするのかな?」「どうしてこんな形をしているのかな」など疑問が湧いてくると思います。そういった疑問を見つけられたら自由研究のテーマになるんじゃないかなと思います。ウォットは施設としては小さいほうですが、そんな興味が湧くような疑問が溢れています。 |
─── ネタはたくさん転がってるんですね。
大竹さん | 飼育員も比較的展示エリアにいることが多いです。みるポイントやアドバイスもできると思うので気軽に質問してくださいね。 |
浜名湖には、想像以上の生き物が暮らしていることがわかった。
魚によって、いろんな習性があるのが面白く、同じ種類の魚でも個体によって性格があるというのは人間みたいで親近感が湧いた。
この記事を書いた人
- 猫と一緒に暮らし始め、猫アレルギー疑惑が払拭されました。猫の毛ってすごい空中に舞いますね。ふわふわ。
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