浜松らんちうが大集合! フラワーパークで開催「らんちう品評大会」
公開日:2020/10/12
ぎょぎょぎょ!金魚だらけの「らんちう品評大会」。
毎年秋に浜松フラワーパークで開催している「らんちう品評大会」がずっと気になっていたので見学に行ってきました!
「らんちう」は金魚の一種
「らんちう」って何ぞや、という方もいらっしゃるのでは?
I am らんちう.
まずはじめに、「らんちう」は金魚の一種です。
江戸時代から明治にかけて和金(1502年に中国から日本に最初に渡来した金魚の原点といえる品種)を品種改良したもので、錦鯉に並ぶ「泳ぐ宝石」といわれ、「金魚の究極」と称されています。
らんちう・ランチュウ・蘭鋳・蘭虫・卵虫など表記の仕方は様々。「らんちう」は昔ながらの表記です。
らんちうには背ビレがない
らんちうは背ビレがなく、ずんぐりとしたカタチをし、頭部にコブがあるのが特徴。背ビレがないため、小さな前ヒレと尾を使い、体をふりふりしながら泳ぐさまがたまらなくかわいい。
頭部のこぶは「フンタン」と呼ぶ
らんちうの優劣を競う品評会は、古くは江戸時代から開かれており、現在では日本だけでなく、タイ・シンガポール・マレーシア・香港・イギリス・ベルギーでも品評会が開催されています。
浜松は「らんちう」で有名
実はここ浜松は、らんちう愛好家にとって知る人ぞ知る地! 浜松産のらんちうは昔から「浜松らんちう」として有名です。とくに、当歳(とうざい)というその年生まれのらんちうが、生まれてから1年にかけて大きく育つといわれています。
浜松はその年生まれの当歳らんちうが人気
その昔、らんちうを育てるのに必要だったのは「ミジンコ」や「アカムシ」など天然のエサ。レンコンの田んぼが多い浜松は、気候が良くてエサが豊富なため、生まれたらんちうが他所より早く、大きく育ちました。
現在らんちうのエサの主流はアメリカ・ソルトレイク産の「ブラインシュリンプ(動物プランクトンの一種)」。購入すれば全国どこでも同条件で育てることができるようになりましたが、浜松には昔からのらんちう愛好家が多く、今でも質の高いらんちうを輩出する地として有名です。
フラワーパークで開催「らんちう品評大会」に行ってきた
毎年秋にフラワーパークで開催される一般社団法人日本らんちう協会 中部本部 錦友会主催の秋季らんちう品評大会を見学に行ってきました。
会場はフラワーパークの芝生広場
会場にズラッと並ぶのは洗面器。 中には「らんちう」たちがふよふよ泳いでいます。
たくさんいる!
思ったより大きいぞ
みんな個性的
きゃわわ
会場に到着したのは10時前。 まだ空の洗面器があるなと思ったら、これかららんちうが入るところでした。
らんちう入りまーす
第109回 中部本部 錦友会 秋季らんちう品評大会
そうこうしているうちに10時になり、開会式の時間に。 挨拶のあとに記念撮影をしたら品評大会のはじまりはじまり!
記念撮影からはじまる品評大会
審査開始です!
洗面器が並ぶ前にある立て札は部門分け。 3部門ごとに競い合います。
親魚…… 3歳以上のらんちう(完成の域に達する)
二歳魚… 2歳のらんちう(完成間近な成魚)
当歳魚… 今年生まれたらんちう(発展途上の若魚)
※金魚は数え年なので、その年生まれの当歳=1歳。
審査を務めるのは審査資格を持った審査員。 (全国大会なら全国大会用の審査資格があるのだそう。)
審査員により審査されるらんちう
らんちうの鑑賞方法は上見(うわみ)といい、魚の姿を上から見るのが基本。審査では上見のあとに全体を確認するようです。
らんちうは上から見るもの
上見のあとは全体を確認
審査基準は協会の会則によって定められています。 (同じくらいのレベルのらんちうが並ぶと、そのあたりはもう審査員の好みになってくるらしい。)
- 1.「魚の総体の姿とバランスがよいこと」
- 2.「魚の泳ぎ方が軽やかであること」
- 3.「魚は太くたくましいこと」
- 4.「鱗の並び色艶が綺麗であること」
- 5.「魚の品位が豊かであること」
基本的には泳ぎを見ているそうです。
背ビレもない、手(前ヒレ)もしっぽも小さくて体も太いらんちうはうまく泳げません。そんな中でもちゃんと真っすぐとキレイに泳ぐということは全てのバランスが揃っているということ。カタチが左右対称で尾の使い方がうまく使えているからこそ。ほんの少し左右対称ではない、尾の付き方が水平でなく曲がっているだけでも真っすぐ泳げなってしまいます。
どんなに綺麗でも泳ぎが大切!
らんちうに点数をつける審査員
審査員がそれぞれの持ち点(1点~5点)をつけ、合計点数の多いらんちうが上位に。
審査で上位6尾になったらんちうは、さらに第二次審査。 今度は審査員がそれぞれ「何番(1番~6番)」とつけ、番号の合計が少ない方からに上位になります。
審査結果が出て、並び替えられる洗面器
洗面器が審査結果順に並び替えられたら順位(役柄)が札で置かれていきます。
らんちうの順位(役柄)付け
らんちうの順位は、最高位が「東大関」、次が「西大関」、「立行司(たてぎょうじ)」「東取締」「西取締」「東関脇」「西関脇」「東小結(ひがしこむすび)」「西小結」…と、まだまだ続きますが、このように大相撲の番付にならって順位が決められています。
1位が東大関、2位が西大関、3位が立行司……
上位5位が優等魚となるので、参加者は優等魚に入賞をとくに目指しています。
横綱がない!?
相撲好きならお気づきでしょう。
「大関」の上に「横綱」がないことに!
らんちうの世界で最高位が横綱でないのは「完璧な魚などいない」という考えから。らんちうに「横綱」の称号が与えられるのは同じ大会で「大関(東か西)」に3回入賞した時だけです。(会によっては東大関(1位)のみをカウントする場合もあるらしい)
3年元気に飼うことも難しい大きならんちう。横綱を獲得することは大変難しいため、めったに出ることはないのだと。
第109回大会の優等魚(1位~5位)をご紹介
それでは、今回の大会で優等魚に入賞したらんちうを部門毎にご紹介します。
親魚の部(3歳以上のらんちう)
第一席 東大関 夏目幸太郎氏
本大会の審査委員長を務める、一般社団法人日本らんちう協会 中部本部 錦友会の杉浦信二会長に、こちらのらんちうが「親魚・東大関(1位)に選ばれたポイント」を伺いました。
杉浦信二会長にお話を伺いました
―――今回、東大関に選ばれたポイントは何でしょうか?
杉浦さん | 全体的な迫力、頭の仕上がり、尾張、胴体の柄、すべてが最上級だね。5点がいっぱい入ったんじゃないかな。今日最高の魚だよね。誰が見てもってくらい抜きん出ているね。 |
―――東大関はダントツで一位だったようです!たしかに迫力があります。大事な「泳ぎ」も美しい。
大迫力、私の拳より大きい!フンタンも立派
―――赤色の発色が鮮やかですね。
杉浦さん | 胴や頭に白色が混ざった模様のことを更紗(さらさ)と言って、更紗は一般的に赤味が濃いのが多いんだよ。更紗の中でも赤色の面積が多いから、赤が勝っている「赤勝ち(あかがち)更紗」だね。 |
こんなに大きいらんちうですが、実はもう一回りくらいは大きくはなれると聞いて驚き。でも、大きくなると欠点も出てくるから難しいそうです。
第二席 西大関 米澤二郎氏
西大関 とにかく泳ぎがかわいい
第三席 立行司 佐藤隆三氏
鱗がきらきら
第四席 東取締 加藤浩章氏
杉浦さん | らんちうは本来はこういう色(オレンジ系)だよ。 |
第五席 西取締 長野耕作氏
らんちうは大きな金魚だと知ってはいましたが、品評大会のらんちうの大きさにはびっくり!
―――趣味で庭先で飼っても、こんなに大きくならないですよね?
杉浦さん | 数が少なければ結構大きくなるんじゃないかな。ここまで(品評大会レベルに)大きくなるのは難しいかもしれないけどね。 |
3000~4000匹のらんちうの赤ちゃんから、こんなに大きく育てられるのは5、6匹というレベル。維持管理費も掛かるし、水槽の水替えも3日に一度など、とにかくお世話が大変! みんならんちうが好きで、これが趣味だからこそできるそうです。
二歳魚の部(2歳のらんちう)
第一席 東大関 杉浦邦彦氏
杉浦さん | 二歳魚も東大関が抜きん出ているね。 |
第二席 西大関 杉浦邦彦氏
第三席 立行司 佐藤隆三氏
第四席 東取締 夏目幸太郎氏
第五席 西取締 夏目幸太郎氏
当歳魚の部(今年生まれたらんちう)
杉浦さん | 浜松らんちうは当歳魚が花形だよ。 |
浜松らんちうの花形、今年生まれの当歳魚たち
花形なので出品数が多い
花形なので、二歳・親魚と比べて圧倒的に出品数が多いです。
(当歳魚が花形と聞きつつも、どうしても迫力のある二歳魚・親魚ばかり見てしまう素人が私です。)
第一席 東大関 工藤千尋氏
当歳魚・東大関の大きさはこれくらい。 遠近法で手前の手が大きく見えますが、広げた指より当歳魚の方が大きい!(あまり近くに寄るとびっくりさせてしまいそうなので手が遠いです。)
実物は広げている指より大きい
当歳魚は人間でいうと成人式くらい。 「若々しさも大切」なので大きければ良いというものでもないのだと。らんちうの世界は奥深い。
らんちうの若々しさとは
第二席 西大関 米澤二郎氏
第三席 立行司 鋤柄剛氏
第四席 東取締 小穴圭介氏
第五席 西取締 工藤千尋氏
いろんな「らんちう」を見てみよう
らんちうの鑑賞の基本は上見(真上から見る)ですが、素人なので横から見るのも楽しいのです。そして、かわいいのです。
ということで、いろいろならんちうを掲載。
パクパク
赤いほっぺ
立ち泳ぎ
当歳魚はまだフナっぽさがあるかも
全身が白の「白(はく)」
んーと、白勝ち更紗? 白勝ってる?
らんちうの写真は上から見て左右対称になった瞬間が撮影のベストタイミング。愛好家の皆さんはらんちうの動きが分かっていて「3回くらいふりふり泳いだら真っすぐになるから」「はい今」と言うのですが、一拍遅れることばかり。そうすると撮れるのは体をくねったらんちうですが、うん、それはそれでかわいい!
ふりふり泳ぐよ
鱗がスパンコールみたい
おしり
品評大会を見学していた小さなお子さん。 多くは「大きい!」などと驚きの声を上げる中、「目がない!」と叫ぶお子さんがいました。フンタンが立派だと埋もれちゃうんですね。
ご安心ください、ちゃんと目はあります
白いフンタンだと目が分かりやすい
ちなみに頭のフンタン。とくに白いフンタン。 プチッと潰れてしまいそうで心配だったのですが、潰れてもらんちうは痛くないから何ともないんだよ(潰しちゃダメだけどね)と教えていただきました。 痛くないのか!でも白いフンタン見てるとハラハラしちゃう。
左右の赤丸がかわいい
口紅とアイシャドウでおめかし
口にピンポイントで赤が差す更紗模様の名前は「口紅」。眼球とあいまって完全にメイクアップしたらんちう。
背中がどうしてもエビに見える
なぜかちょっと犬っぽい
「いくらちゃん」と勝手に呼んでた
ちょっと気になる「らんちう性別」の見分け方
らんちうの性別を上から見て見分けるポイントは、前ヒレ!
オスのらんちう
オスのらんちうは前ヒレが少し大きい。 さらに春の繁殖期になると、前ヒレの前方に追星(おいぼし)という白いザラザラした斑点が出てきます。
泳いでいるらんちうを眺めながら、「ほら、追星がギリ出てるよ」と言われるもさっぱり分からず。
二歳魚オス、拡大したら追星がギリ見えた!
きちんと性別を確認する場合には排泄口を見ます。
オスの排泄口は細長い楕円形、メスに比べて小さい
オスの排泄口は横から見ても突出していない
メスのらんちう
メスのらんちうは体の大きさに比べて前ヒレが小さく、オスと違って追星が出ません。
二歳魚メス
前ヒレの大きさの違い、素人には難しいです。
メスの排泄口は丸く、横からみると突出してる(この子はまだ少しわかりにくいなとのこと)
小さい頃は性別がわからないけど、春の繁殖期に色気づいてくると特徴が出てくるそうです。春にらんちうを見る際には、追星でオスメス見分けられるか挑戦してみます!
表彰式がはじまった
10時から審査がはじまった品評大会は、13時半頃にはフィナーレとなる表彰式に。親魚・二歳魚・当歳魚と部門ごとに表彰されていきます。
表彰式
錦友会は、沼津の「東海らんちう会」、磐田掛川の「遠州らんちう会」、「浜松らんちう同好会」、「豊橋愛錦会」、渥美半島の「渥美学蘭会」という5つの団体の集まり。
品評大会では、それぞれが所属している団体同士で競う「団体戦」も同時に実施。個人の成績が獲得点数となり、合計点数が多い団体が優勝です。
今回の団体戦の総合優勝は「遠州らんちう会」!
おめでとうございます!
お写真撮らせていただいた
オススメの見学時間
フラワーパークのイベント案内には11時~14時開催とありますが、審査の様子を見てみたいという方は10時台(審査中はお邪魔にならないように見学しよう)。審査結果が出ているのが良ければ11時以降。13時半には表彰式だったので、それまではのんびり見学できそうです。
品評大会というと少しピリッとした空気が流れているのかなと思いきや、終始穏やか。愛好家の皆さんは大変親切なので、らんちうのことで気になることがあればきっと教えてくださいます。
らんちう初心者の私ですが、品評大会では愛好家の皆さんに鑑賞のポイントや撮影方法など大変親切に教えていただきました。本当にありがとうございました!少しでも多くの人がらんちうに興味を持ってくれるとうれしいという気持ち「らんちう愛」が伝わってきました。
らんちうのことは何も知らなくても、あの大きさにずんぐりボディ、ふりふり泳ぐさま。一度見たら、らんちうの虜になる人がきっと続出ですよ!
秋だけではなく春にもらんちう品評大会は開催されるので(春は頭陀寺にて)、らんちうが気になる方はぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。開催は(一社)日本らんちう協会のHPの年間行事予定から確認できます。
審査を終えたらんちうたちは、それぞれ袋へ。(水が黄色いのは病気にならないように薬が入っているから)
袋に酸素を詰めて、車に乗って帰ります
らんちうよ、車酔いしないのかな?
この記事を書いた人
- 文鳥を飼っています。
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