浜松市防災学習センターで防災について学ぼう。
公開日:2020/03/11
災害について想像するのは怖いけれど、絶対に考えておきたいのが「防災」について。
浜松市にある、「防災」についての学習や体験のできる施設「浜松市防災学習センター(はま防~家)」をご存知ですか。
防災教育に力を入れるこちらの施設、子供だけでなく、大人も参考になるところがたくさんあるんですよ。
いざという時に慌てないためにも、防災について学んできました。
浜松市防災学習センターってどんな施設?
まずは、浜松市防災学習センターの副センター長の安野さんに施設の概要についてお話を伺いました。
安野さん |
浜松市防災学習センターは、市民の皆さんに防災について広く普及していこうと一昨年の12月1日にオープンいたしました。今年でちょうど2年目に入ります。 ありがたいことに、これまでの入館者数は1万8000人を越すほど。数多くの方が当センターを訪れ、防災について学んでおられます。 |
─── 多くの方が来館されているんですね! 皆さん、防災に関しての関心が高い。ちなみになのですが、この建物は…?
安野さん |
もともと、この建物は小学校だったんですよ。 小学校の廃校にともない、校舎をどう活用していくかという議論が行われました。 様々な活用法が議題に上がりましたが、小・中学校のカリキュラムでも防災学習ノートを使った防災教育が盛んになってきている中で、学校でカバーできなかったことを補完する施設が必要ではという意見があり、その当時はそういった防災教育に特化した施設がなかったことからこの施設がつくられました。 |
安野さん | 浜松市防災学習センターの入っている東棟は平成になってから増築されたものでして、耐震のほうも新耐震基準を満たしているということで、防災学習センターの施設としては、もってこいの建物なんですよ。 |
「知る」「感じる」「つながる」
安野さん | 防災について「知る」「感じる」「つながる」が当センターのコンセプトになります。 |
- ・自分の住んでる町、浜松ってどんな災害が起こるのか、ということを学び、その災害に対し、どう備えるのかを「知る」展示
- ・災害が起きた時に浜松の街がどんな様子に変化するのか、避難所ってどんな感じなのか、子供達にとって未知の災害を展示を通して「感じてもらう」展示
- ・防災活動を行う団体様を招いて講演やイベントを行うことで個人と団体を「繋げていく」活動
─── 学ぶということは知識だけでなく、感じたり体験することも重要ですもんね。確かにこういう体験を交えた教育は専門施設でないとできないですね。
安野さん | また、「つながる」には、ここへ来ていただいた方がお家に帰られてから、ご家族やご友人に防災について学んだことをお話をしていただくことで、防災についての関心が広まっていってほしいという願いも込められているんですよ。 |
浜松市ってどんな災害がおこるの?
早速、館内を探索。
貴センターのご厚意により、スタッフさんに館内を案内していただきました。
デジタルはまマップ
まずは、こちらのプロジェクションマッピングの映像を鑑賞。
安野さん |
展示物は、ひらがな表示が多かったり、漢字についても小学校4、5年生を基準にフリガナを付してます。 お子さまが見ても飽きないわかりやすい展示を心がけています。 |
プロジェクションマッピングで投影された映像では、地形の成り立ちや歴史などから、浜松の災害について多角的に解説されていました。
デジタル はまマップ |
〜 今からおよそ500年前に起こった明応(めいおう)地震では、大津波によって浜名湖と海が繋がったと伝えられています。その場所を今切と呼んでいます。 〜 |
─── これは、大人も勉強になるやつだ。
さらに、天竜川の氾濫なども解説。そして、いつか来る来ると言われ、静岡県民を震え上がらせている「南海トラフ巨大地震」の解説も。
南海トラフとは、日本列島南側の海側プレートが陸側プレートに沈み込んでいる溝のこと。
この溝、駿河湾の真ん中を縦に突っ切るように入っており、東海大地震も南海トラフの一部、駿河トラフから発生すると言われています。
この地震が発生するとマグニチュード8〜9(震度7)クラスの地震が発生すると言われています。その時の浜松は、市内のおよそ6割で震度6強〜7という、立っていられないほど大きな揺れが起きるのだとか。
大きな揺れの後には津波もやって来ます。沿岸部を中心に10m以上の津波がおしよせ、地震が起きてからおよそ20分で市街地まで水が流れ込んでくる、とのこと。
─── なるほど、静岡に住んでる以上、被災の可能性が少なからずあるんですね。
地震に備えてできる準備ってどんなことがあるんでしょうか。
個人単位でできる防災
こちらは、震災の仕組みを模型で学ぶコーナー。
スタッフの方 |
こちらのコーナーは、模型を動かすことで地震の仕組みを観察できるコーナーです。 日本に働きに来ている外国人の方の研修で、当センターを利用されることがあるのですが、母国に地震があまり起きない国出身の方は特に興味深そうに見ていらっしゃいますね。 |
─── 施設を利用するのは日本人だけではないんですね。模型だったら直感的に何が起きるのか理解できますね。
液状化という現象をご存知ですか?
テレビで報道されたものを見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。液状化は日本人でも実際に目撃した人が少ない現象なんだそうですよ。
液状化を観察できる装置
液状化は砂地盤で起こりやすいらしい
ボタンを押すと振動が加わり、砂の地面から水がポコポコと滲み出て来て家が沈んでしまいました。
土の粒子と土の粒子の間には水分が含まれています。地震の揺れにより土の粒子の位置が変わり、粒子の間に収まっていた水が滲み出て来ることにより、地盤が泥水のようになってしまうのだとか。
こちらは実際に被災したお家の写真を展示。
物が散乱し悲惨な状況が見て取れる。
写真の対面の壁には家庭でできる防災対策を解説。
こちらの映像は、家具固定対策をした場合としない場合を見比べたもの。
その差は歴然ですね。
─── 家具固定ってすごく大事なんですね。
スタッフの方 |
日頃の備えがいざという時に役に立ちます。 南海トラフ巨大地震のときには震度7ほどの揺れが起こると言われていて、この家具固定の実験も同じくらいの揺れを想定して行われています。 |
─── 震度7かあ…。東日本大震災も最大震度7を記録しましたね。
スタッフの方 |
震度7くらいの大きな地震ともなると、ライフラインの復旧に時間がかかり、なかなか物資が届かない可能性があるんです。 ですので、備蓄の目安は一般には最低でも3日間と言われてますが、最近では7日間生活できる程度の備蓄がある方が良いとされています。 |
─── 7日分…!どのくらい用意すればいいのか具体的なイメージがわかないですね…
家の備蓄の他に、避難の際に持ち出すものなどの準備もある
非常食を7日分と考えると大変ですよね。
非常食を大量ストックとなるとお金もかかるしスペースも必要。
日常食の消費しながら備蓄するローリングストック(回転備蓄)という考え方があるそうですよ。
詳しくは静岡県公式ページにてPDFにて配布中です。(静岡県/備蓄について:https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/chosa/bichiku.html)
こちらはタブレットを使ったクイズのコーナー。
上の写真の白黒マークにタブレットをかざすとクイズ開始。
クイズ解答後にカメラで同じところを撮影するとARが出現する
探検気分で謎解きするこのコーナーは子供にも大人気
キッチンや寝室、ベランダなど多様なシーンがあり、実際の家具や家電が揃っていて本格的でした。
もしも、実際に被災したら?
こちらは、もしもシュミレーター。
三面のスクリーンを使い、被災した直後にどんな行動をとるのが安全なのかを3択クイズで出題。
ゲーム感覚で実用的な知識が学べる人気のコーナーだそうです。
いざという時に役に立つ知識を紹介。
安野さん |
命を守るのに正しい選択を知っているというのは大事なことなんです。 例えば、山間部にお住いの小さなお子さんたちは、がけ崩れに対する防災の知識は理解していても、津波や水害についての知識はあまり知らなかったりします。 逆に沿岸部の子は津波や水害についての知識あっても、土砂崩れなどの山間部の防災についての知識は乏しかったり…。 |
─── 住んでる地域で知識の偏りがあるんですね。
例えば、北区の子と南区の子が海水浴に行ったとして、まさにその時、津波があった場合に、とっさにの行動に差が出てしまうということもありえるんですね。
安野さん | なにか災害があった時に、すぐ行動に移せるかというのが生死の境目だったりするんです。 |
─── こういったシュミレーターならイメージしやすいですね。満遍なく防災に対する知識をつけることで、子供達の将来の命を救うことにつながるかもしれないんですね。
次は被災直後の街の展示。
実際に被災した時に目にする光景をわかりやすく展示していました。
被災した街では、ブロック塀や瓦屋根が崩壊。
スタッフの方 |
災害が起きた後、家が安全ではない場合は緊急避難場所や避難所に向かいます。 震災後の街にはいろんな危険があります。電柱の配電線が切れてしまっていた場合、うっかりそれに触れてしまって感電してしまったり、地震火災に巻き込まれたり… |
─── せっかく地震発生後も助かったのに、その後避難途中で命を落とす場合もあるということですね。
スタッフの方 |
避難経路を決めておくだけでなく、実際に歩いてみてあらかじめ危険のないであろう道を決めておくことが大切です。 また、避難経路は何パターンか決めておくことも大事で、せっかく事前に決めた道が何らかの原因で通れないということも起こり得ますので。 |
─── 被災した直後は目印にしていた建物が倒壊していたり、普段と景色が違う可能性がありますもんね。精神的にも極限ですから普段ではあり得ない見落としをする可能性もありますね。
スタッフの方 | 何度か歩いてみることが大切です。どのくらい時間がかかるかも事前に分かれば安心です。 |
こちらは避難所で与えられる一人当たりのスペース。
スタッフの方 | 実際に入ってみますか? |
─── ぜひぜひ。
(靴を脱いで中にあがる)お…これは結構狭いかも…。
スタッフの方 |
実は、このスペースすら最初は確保できないと言われています。 家に甚大な被害があり、住めないのであれば、避難所へということになります。 |
─── 住み慣れた家の方が確かに落ち着いて過ごせそうではありますね。でも、避難所にいた方がご飯とかの物資がもらえそう…
スタッフの方 | 浜松市の場合、在宅避難するときには近くの避難所や区役所などに在宅避難の旨を申告すれば、水や食料といった支援物資の配給を受けることができるんですよ。 |
─── 配給を受けられるんだ!それは知らなかったです。それは絶対に在宅の方がいいなあ。
スタッフの方 | ペットを飼っている方は特に在宅避難が良いと思います。飼い主が避難する際はペットも避難所に連れて来ることになっているものの、避難所の居住スペースには飼い主と一緒には入れないんですよ。ケージに入れて居住スペースとは別の場所に置いておくことになります。 |
─── 避難所は共同の場所だから、個人の都合は通らないですよね…。不安で極限な状態だから、些細なことがトラブルに繋がる恐れもありますね。
スタッフの方 |
いろんな人が利用しますから、気をつかうと思いますね。 お子さんなんかも慣れない環境でストレスを感じたり、お母さんも泣き声や走り回る子供をなだめたりして大変なんです。 出来るだけ、家の備蓄を備えて、在宅避難できるようにしておくのが良いと思いますね。 |
こちらはダンボールでつくった簡易ベッド。
スタッフの方 | こちらも寝転がってみますか? |
─── 寝返りに気を遣うなあ。笑 あぁ、でも、結構丈夫ですね。しっかりしてる。
こちらは簡易トイレ。
─── 簡易トイレかあ…。
(実際座ってみる) う〜ん、心もとないかなあ…でもないよりはだいぶマシか。
簡易トイレってお値段っていくらくらいなんですか。
スタッフの方 |
数千円から数万円まで商品によってお値段が違うので一概には言えませんが、缶の方が若干お高くはありますね。 ダンボールの方は安価ですよ。2000円〜3000円で購入できます。 |
─── 2000円〜3000円程度なら出せる。
スタッフの方 |
お家のトイレが壊れてなければ、そちらも使用できますよ。 お家のトイレにゴミ袋をかぶせて、その上から携帯トイレの黒い袋をかぶせて、使用後に凝固剤を入れて使います。 |
─── 凝固剤とトイレ用の中身の見えないゴミ袋だけ買えばいいのか。
とりあえずの準備としてはかなりハードルが下がったように感じます。
災害時のトイレについて静岡県が簡単にまとめてくれていますので、ぜひこちらのPDFを一読ください。( http://www.pref.shizuoka.jp/bousai/chosa/documents/toilet-reserved.pdf ※PDFファイルへのリンクです。)
その他の設備
その他には、キッズコーナーや調理スペースのあるコミュニティスペースもありました。
こちらのコミュニティスペースでは、ポリ袋に食材を入れて湯煎で加熱するパッククッキングの体験講座なども開催されています。
パッククッキング講座は大人気で予約が殺到。参加者は抽選なんだそうです。
3階には講座室もあり、防災についての講座が行われています。
色んな切り口から防災について学べる講座は実用的な知識が満載!
多くの方がこれまで講座に参加されています。
南海トラフ巨大地震の震度分布
震災のことを考えると悲しい&不安な気持ちになってしまうのであんまり考えないようにしていましたが、漠然とした不安や恐怖を打ち消すためにも、今回は勇気を振り絞り、見学に行ってよかったと思います。
すぐにできる対策としては家具の固定と備蓄ですかね。
100円均一でも家具の耐震グッツが手に入るようです。
全部の家具を固定するのは大変そうですが、大きめな家具や避難の際に玄関までの道を塞いでしまいそうなもの、食器棚などの倒れると危ないものだけでも対策しておくに越したことはないなと思いました。
皆さんも、この記事をきっかけに防災について知ってもらえたら嬉しいです。
エントランスにナマズさんがいました。
大昔は大ナマズが地震を引き起こすと言われていた
恥ずかしがり屋さん
この記事を書いた人
- 猫と一緒に暮らし始め、猫アレルギー疑惑が払拭されました。猫の毛ってすごい空中に舞いますね。ふわふわ。
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