天竜川で綺麗な石を探そう!【天竜川下流】
公開日:2021/07/16
- 1. 綺麗な石を拾おう
- 2. 浜松科学館で石のこと聞いてみた
- 2-1. 石って一体何?
- 2-2. 岩石のでき方 3パターン
- 2-3. 天竜川について
- 2-4. 一攫千金の夢
- 2-5. これなんの石?
- 3. 天竜川の岩石標本を作ろう
「あ〜あ。世の中に疲れた!純粋無垢な子供の頃に戻りた〜い!」
そんな濁った目をした、くたびれた大人必見!
あの幼い日々のトキメキを取り戻すいい方法がありますよ。
その方法とは…、
川で綺麗な石を探す!
どうですか。「そんなことして何になるのか」と一瞬でも考えてしまった、そこの貴方!
貴方は生産性という檻の中で右往左往する悲しき生き物になってしまっている。もっと己を解放しましょう!
子供の頃、公園や海、川で石をよく拾って遊びましたよね。
そして、お気に入りの石をポッケに入れて家に持ち帰ろうとして、大抵は親に説得されてやむなく手放すことになるんです。
この誰しもが経験する「キレイな石探し」、大人でも怖いくらい夢中になれるんですよ、これが。
“良い”石を探しているときは、日々の煩わしさ、明日の不安なんてちっとも感じない。
そう、完全なる無心に還るのです…。
綺麗な石を探そう
今回、我々が石を探しに行ったのは「天竜川緑地」。
河原まで歩いていくことができます。
流石は河川敷。見渡す限りが石。
玉石混淆、選り取り見取り、バラエティ豊か…とにかく、
すごくいっぱいの石があるぞ!
石が無限にあるみたい!
この目も眩む石たちの中から“良い”石を探していこう!
石に”価値”を見出していこうではないか
川の水がひんやりとして冷たくて気持ちがいい!
熱中症にならないように帽子被ったり、水分補給を忘れないように作業します。
潮干狩り感
アマさん感
いざ、その気になって探してみると、あるはあるは!宝の山です。
なんということでしょう、開始5分ほどでもう10個以上集まりました。
宝の山
石って複雑な模様してるな
一ヶ所を掘り掘りする作戦
掘るに従って小石が目立つように
歩き回って探す作戦
焼き芋みたいな石だなあ
サイケデリックな石
水で濡らしたら模様が浮き上がった
砂金?めっちゃキラキラしてる
浜松科学館で石のこと聞いてみた
無心で石を探していたら、ある疑問がふんわりと浮上して頭から離れなくなりました。
それは「そもそも石って何?」という、ごくシンプルな疑問。
すごくシンプルな質問なのに、自分を含めた周りの大人に聞いても誰一人として満足な答えが返ってこない。
こんな時にどこに駆け込むべきか。─── そうだ、浜松科学館にいこう!
今回、石についての疑問に答えてくれるのは、うえちゃんこと上野さん。
石を見るとついロックバランシングしてしまう、うえちゃん
─── 今日は、お時間作っていただきありがとうございます。天竜川で石を見ていたらいろんなことが気になってきちゃって。
上野さん |
気になってしまいましたか。なんでも聞いてください。 僕のお答えできる範囲でしたら精一杯お答えしますよ! 石好きなんですよ、僕。 |
─── 上ちゃんは石好きでもありましたか!守備範囲が広いなあ。
上野さん |
石ってね、その魅力にハマると沼なんですよ。 僕が石にハマるきっかけは大学院生の時に受けた地学の授業。 必修科目ではなかったのに実習まで一緒に行っちゃったくらい面白くて(笑) 僕の家には、たくさんの石がありますよ。 |
─── ご自宅にコレクションがあるんですか!
上野さん |
そうなんですよ〜。 どう思います?家に石が大量に保管されてるって。 ちなみに、うちの奥さんはすぐに自然に返そうとしますね。 大掃除のたびに「これいる?」って確認が入ります(笑) |
─── あはは!(笑)奥さんの気持ち、めっちゃ分かる。
上野さん | 僕が河原でいい石を見つけて、その石を拭き拭きし始めたら奥さんがチョップしてきますね。「放せ!こら、放せ!」って(笑) |
─── 仲良いな(笑)
石って一体何?
─── もう、単刀直入に聞いてしまいます。石って何ですか?
上野さん | …石って、石じゃないんですよ。 |
─── うん、え…?
石ではない??
上野さん |
ふふ、ややこしくなってきましたね(笑) 「石」って科学用語ではないんですよ。 学術的な言葉で言うならば「岩石」もしくは「鉱物」。 |
─── 「岩石」もしくは「鉱物」。
上野さん |
“石”をとある辞書で引くと、「岩より小さく砂より大きい鉱物の固まり」とあります。 |
─── ん〜、わかるようでわからないような。
上野さん |
じゃあ、辞書では岩石はなんて書いてあるのか。 これはね、「岩や石のこと」って書いてある(笑) |
─── あははは!(一同笑い)そんな!熟語をばらしただけじゃん!
上野さん |
科学用語を使うのであれば、石のことは「礫(れき)」って言葉で言い表します。 0.063mmより小さいものが“泥(どろ)”、0.063mmから2mmのものが“砂(すな)”、2mm以上を“礫(れき)”。 今、僕は礫(れき)に囲まれていると言えますね。 |
“鉱物が集まって出来た礫”に囲まれたうえちゃん
上野さん |
さて、ここから少し話が大きくなりますよ? まず、「地球やマントルを構成する物質が鉱物」。 それから、「鉱物が集まったものを岩石」。 |
─── じゃあ、鉱物は?
上野さん |
鉱物はね、「月や地球などの惑星を構成する天然で均質な無機物のこと」。 難しいでしょう? |
─── 難しい!話が宇宙規模になっちゃった。惑星を構成する物質ってことは、地球が生まれた時に鉱石ができた?
上野さん |
そうなんです。 ロマンチックにいうならば、石は宇宙からきたとも言える。 |
上野さん |
鉱物の中で、一番わかりやすいのが、ケイ素と酸素がくっついて出来た「二酸化ケイ素(SiO₂)」。 珪石(けいせき)なんて呼ばれますが、もっとわかりやすい名前で呼ぶと「石英(せきえい)」。 |
─── 石英って聞いたことある。
上野さん |
今日は僕のコレクションからいくつか持ってきましたが、石英も持ってきましたよ。石英の中でも無色透明なものを水晶と言いますね。 |
水晶(石英)
─── 綺麗。ケイ素と酸素がくっつくとこうなるのか。天然の鉱物は偶然の結果ここにこうしてあるわけですけど…、こんなに美しいものができてしまうなんて偶然とは思えないなあ。不思議だなあ。
上野さん |
ね、面白いでしょう?地学は沼です。 |
岩石のでき方 3パターン
上野さん |
岩石のでき方は3種類あります。 「堆積岩」「火成岩」「変成岩」と呼ばれるものですね。学校で習いましたかね。 |
─── ああ、覚えがあります。
上野さん |
泥、砂、礫などが、風で運ばれ水で運ばれ、どんどん積もって長いこと押しつぶされて出来たのが堆積岩。 |
─── 堆積岩になるのってどれくらいの時間がかかるんですか。
上野さん | これは一概には言えませんが、多くの場合は、砂→砂岩、泥→泥岩の変化にかかる時間は1~2千万年程度だとされています。 |
─── 道端の石を蹴ったりしたら、もう不届き者ですね。大先輩に蹴りを入れていることになる。
上野さん |
マグマが冷え固まってできるのが火成岩。 火成岩にはマグマが急に冷え固まって出来た「火山岩」と地下深い所でゆっくりと冷え固まった「深成岩」っていうのがあります。 火山岩で身近なものは…、「軽石」とかは知ってるんじゃないかな。 |
─── ああ〜!園芸でポットに敷いたり、踵の角質を削ったりする軽い石ですね。あれ、元マグマだったんだ!
上野さん |
深成岩で身近なものだと「花崗岩(かこうがん)」。 「御影石(みかげいし)」とも呼ばれますね。 |
─── お墓の石?(“御影石”を検索してみる)へえ〜!建材としてよく使われるんですね。
上野さん |
変成岩は、火成岩や堆積岩が熱や圧力で変化したもの。 マグマの近くで温められたり圧力がかかったりね。ほとんどの変成岩は地底出身。 有名なのが「大理石」ですね。 |
─── そんな深い地底にあるものがどうして地表に出てきたんですか。
上野さん |
噴火により押し出されたり、マグマによって流されたりというのもありますし、雨風で大地が削られたり、地震によって隆起したりなど、地表に出てくるのにいくつかのパターンがあります。 |
天竜川について
天竜川河口
上野さん |
天竜川って実は日本でも有数の石の産地なんですよ。 長野県の赤岳から諏訪湖、木曽山脈や赤石山脈を抜けて浜松に流れ込む。 いろんな地質を通ってくる川なんです。 日本の大体の石は天竜川にあるかもって言われるくらい豊富なんです。 |
─── 石のデパートみたい!なんでもあるんだ。
天竜川石見本
上野さん | 河口もあれだけ幅が広いのに、ごろごろ石がある。普通はもっと石が小さく削られて砂浜のような感じでサラサラになっちゃうのが多いんですよ。 でも、天竜川自体の流れが急なので、大きな塊のまま激流に乗って河口まで流されてくる。石の観察や採集する人に天竜川は人気ですよ。 |
─── へえ〜!意外と凄いんだなあ、天竜川。
上野さん |
天竜川ってかっこいいんですよ。アツいんです。 |
一攫千金の夢
─── 石とは関係ないのですが、石を拾っているときに砂のところに砂金がいっぱいあって、砂金は金ですよね。集めたら大金持ちになれる?
上野さん |
まず、砂金は金です。集めて固めたら、金の延棒になります。 |
─── おお!一攫千金!
上野さん |
ですが、川底でキラキラしてたやつの大体が金じゃないです。 |
─── (沈黙)…。
上野さん |
夢を壊してごめんね(笑)それは黄鉄鉱(おうてっこう)の可能性が9割です。 黄鉄鉱は黄色い鉄の石です。 でね、なんでそう言えるかというと金は比重が重いからまず表面にいることってないんですよ。もし、そこに金があったとしても、その砂のさらに下に潜ってるのが金。 |
黄鉄鉱
─── (夢から醒めて)も〜、紛らわしい!お金持ちになる夢が…。
上野さん |
さらに夢を壊しますが、ゴールドラッシュってもう難しいんですよ。 金の時価って5000円くらい?(6月30日の時点で 1g=7024 円) 砂金ほどの大きさ、爪の先のキラッとした金、あれ0.001gくらい。 ね、どんだけ取るねんっていう。 |
─── ああああ。1g集めるのに死ぬほど時間かかるのに、たったの5000円か〜〜〜〜!
これなんの石?
─── 私たちが探した石ってなんの石かわかりますか。
上野さん |
よし!間違えちゃうかもしれませんが、いっちょやってみましょうか。 |
─── やった〜!じゃあ、これとこれとこれも…(たくさん石を机に並べ出す)
上野さん |
たくさん出てきたなあ(笑) このしましまの石は簡単!「流紋岩(りゅうもんがん)」です。 流紋岩は火山岩ですね。 |
上野さん |
この辺は「片麻岩(へんまがん)」だと思います!変成岩の一種。 |
頁岩
上野さん |
うわ〜、これは難しいなあ〜。 (頭を抱える)「蛇紋岩(じゃもんがん)」!…いや、「閃緑岩(せんりょくがん)」かな?いや〜! ごめんなさい、ちゃんとした専門家の方に調べてもらったら全然違う種類ですって言われちゃうかも。 |
閃緑岩
─── 石の色って全然当てになりませんね。同じ種類の石でも全く見た目が違う。超難しいですね、石の特定。石の色ってなんでこんなに違うんですか。
上野さん |
含まれてるものが違うんですよね。う〜ん、成分が違うとしか言えないなあ。 何かが混ざることによって色がついて見えることもあります。 石英の場合でいうと不純物が混ざると濁って見え、純度が高ければ透明に見えます。 |
チャート
上野さん |
チャートは生物の死骸が入ってます。 放散虫っていう小さな生き物だったり、プランクトンっていうとしっくりきてもらえるかも。 海の中だと何か環境の変化で何千何億というプランクトンが死んで積もって出来た層が長い時間押し潰されてできたのがチャート。 |
─── じゃあ、今死体を持ってる…?
上野さん |
まあ、大まかにいうとね(笑) そのギャグが通じるのは余程というか、かなりマニアックな集団ですけどね。 |
石の世界、面白〜い!
浜松科学館の上野さんにお話を聞いた後は、もっと石のこと好きになりました。
身近な石に疑問を持ったことが地球の成り立ちの話まで大きな規模の話になっていき、どんどん視野が広がっていくのが爽快でした。石ってこんなにもすごい存在だったんだとロマンを感じました。
「岩石は自然が産んだ芸術品」
足元に転がっているほとんどの石は、人間の社会では価値はないのかもしれない、宝石に比べたら希少価値もないけれど、
宝石と同じくらい美しいし、地球の歩んできた歴史が詰まっている、素晴らしいものなんですね。
科学館のバックヤード、唸るほど標本ある
この記事を書いた人
- 猫と一緒に暮らし始め、猫アレルギー疑惑が払拭されました。猫の毛ってすごい空中に舞いますね。ふわふわ。
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